最近、東芝のレコードはマトリクスにはプレスマークという刻印があり、それを見るとおおよそのプレス時期が分かると言うことを知ったので検証してみたいと思います。なお、今回検証するのはビートルズ関連に絞ります。



これがプレスマーク。”7K”と刻印が有るのが分かります。数字の方がプレス年を表しているようでこのレコードは1967年のプレスである事が分かります。


先ずは東芝音楽工業時代のものから見ていきましょう。1973年以降は会社表記が東芝EMIに変わるのでそれ以前にプレスされたレコードです。


ビートルズ関連のレコードの品番は1968年迄はOP(モノラル盤はOR)、アップルレコード設立後の1969年から1973年迄はAP(モノラル盤はAR)となります。73年の社名変更時にはEAPに変わりますが一部は品番の変更はされなかったようです。


Meet The Beatles(OR-7041)

1964年にビートルズ!という邦題でリリーズされた国内ファーストアルバムです。この時代の東芝製レコードにありがちな盤が赤い色をしている赤盤です。USファーストアルバム(キャピトルレコードファーストアルバム)と同じタイトル、ジャケットを使用していますが曲目は日本独自のもの。UKファーストアルバムである”Please Please Me”、セカンドアルバム”With The Beatles”のいいとこ取りしたような内容がモノラル音源で収録されています。マトリクスにはMM?(一部読取不可)M4という刻印があり、64年にプレスされた事が分かります。ただ、刻印が上手くいかなかったようで打ち直されたのでしょうか?


右側は”Meet The Beatles”US盤。ジャケットとタイトルこそ同じですが内容は全く別物。


A Hard Day’s Night(OP-7123)

1964年にビートルズがやってくるヤァ!ヤァ!ヤァ!という邦題でリリース。赤盤です。ジャケットこそ独自のデザインですが収録内容は同タイトルのUKオリジナルアルバムと同じものです。”Long Playing”表記があるので初期の物です。マトリクスにはK4L?Z?4(一部読取不可)という刻印があります。64年当時のもので間違いないと思います。此方も刻印が上手くいかなかったのか打ち直したようです。


初期のプレスはレーベル面に”Long Playing”の表記があるのが特徴。


With The Beatles(OP-7549)

1966年の来日記念としてステレオ!これがビートルズvol.2”という邦題と曲順、ジャケットを変えてリリースされたもの。会社表記こそ東芝音楽工業ですが製造が間に合わなかったため一部の盤に関してはプレスを外部に委託していたようでその様な盤はこの時代の東芝の赤盤ではなく普通の黒番です。マトリクスにはF6という刻印があるので66年頃のプレスであると思われます。


                     オデオンレーベルですが盤は黒い。

Revolver(OP-7600)

1966年に発売されたサイケデリックな雰囲気のアルバムです。ステレオ盤のみでの発売でレコードは赤盤。マトリクスにはJ6という表記があるので66年のプレスであると思われます。


Rubber Soul(OP-8157)

1965年リリースですが此方は”OP-8157となっており、1967年の再発盤です。モノラル盤はなく、レコードは勿論赤盤。マトリクスには7Z?L?(刻印が薄くZなのかLなのか判然としません)とあるので、67年のプレスです。


A Collection of Beatles Oldies(OP-8016)

1967に発売されたベスト盤的な位置付けのアルバムです。日本盤はタイトルが間違えており、”A Beatles Collection of Oldies”となっています。他にも、裏ジャケのメンバー写真がUK盤では裏焼になっているものの、日本盤では本来の向きに修正されているのも特徴です。CD化はされず現在では完全に廃盤状態になっているため、レコードのみでしか聴くととが出来ません。日本ではステレオ盤のみでの発売であり、盤は赤盤です。マトリクスには7Kとあるので67年にプレスされたものです。


The Beatles Second Album(OR-8027)

1964年にビートルズNO.2という邦題で発売された国内セカンドアルバムの再発盤です。ビートルズ!から漏れた曲をモノラル音源で収録。品番がOR-8027となっているので67年の再発盤です。勿論赤盤。マトリクスには8Mという刻印があるので68年のプレスでしょうか。


  再発盤なのでレーベルに”Long Playing”表記はありません。

Sgt. pepper’s Lonely Hearts Club Band(OP-8163)

1967年に発売された世界初のコンセプトアルバムと言われる名盤。ステレオ盤のみの発売で赤盤です。マトリクスには8M8Lといった刻印があります(どっち??)。何故2つも刻印があるのか(しかもどちらも違った刻印)なのかは分かりませんが68年のプレスである事が分かります。


刻印が2つあります。左から”8L”、”8M”です。正しいのはどっち??


Abbey Road(AP-8815)

1969年リリースのアルバム。これまたジャケットが有名な名盤ですね。本作からはUK盤もステレオ盤のみです。この頃になると黒盤も作られるようになったようで盤は黒盤です。マトリクスには1H?(一部読取不可)という刻印があるので恐らく71年のプレスだと思います。


   赤盤も有りますが僕が持っているのは黒盤


Let It Be(AP-80189)

1970年にリリーズされたビートルズのラストアルバムです。最近50周年記念盤が出ましたね。僕が持っているのは写真集が付いておらず、ジャケットにはお馴染みのひょうたん帯に加えアカデミー賞受賞記念帯が付いているので71年以降のセカンドプレスです。マトリクスにはK1の刻印があるので71年のプレスです。盤は赤盤となっています。なお、この頃になると赤盤から通常の黒盤に移行するようになったので赤盤としてはかなり末期のもの(黒盤に完全移行となったのは73年頃とも言われています)です。


      赤盤としてはかなり末期のもの


Ram(AP-80283)

1971年発売のポール・マッカートニーの2枚目のソロアルバムでかつポール&リンダ・マッカートニー名義でリリースされた唯一のアルバムです。赤盤も存在しますが数が少ないようでかなり高額です。国内盤ですがPTS方式という最新技術でカッティングされており、ジャケットには高音質を謳ったステッカーが貼り付けられています。音もCDのリマスター音源と比べてみると心なしか厚みがある気がします。マトリクスの刻印は薄くて上手く読めませんが1F?と書いてあるようなので71年のプレスでしょうか。


        右下のステッカーに注目


Imagine(AP-80370)

1971年にリリースされたジョン・レノンの2作目のソロアルバムです。誰もが知る名盤ですね。アルバム中でポールを痛烈に批判しているのも有名な話。赤盤も存在しますが僕が持っているのは黒盤です。マトリクスにはZ”という表記があります。が何を意味するのか詳細は分かりませんが東芝音楽工業で2000円表記なので初期のプレスではあると思います。


Wild Life(AP-80377)

1971年にリリースされたウィングス(ポールが新たに組んだバンド)のファーストアルバムです。ビートルズ時代に比べかなりラフな音作り故に酷評もかなりあったようですが逆に僕はこういうシンプルな方が好きです。マトリクスはMM?(一部読取不可)という刻印があり、詳細なプレス時期は不明ですが東芝音楽工業表記なので71~73年までの間にプレスされたものでしょう。


Hey Jude(AP-8940)

1970年にリリースされたアメリカ編集盤の国内盤です。ビートルズの意向と関係なく作られたためメンバーからは酷評されているそうです。此方もCD化はされていないようです。マトリクスには2Gと刻印があるので72年のプレスです。


All Things Mast Pass(AP-9016C)

此方は1970年にリリースされたジョージ・ハリスンのファースト・ソロアルバム(それ以前に映画のサウンドトラックを2枚出していますが其方はインストなのでカウントしない)です。レコード3枚組というボリュームでしたがかなりの売り上げを記録したそうです。僕が持っているレコードには3Bという刻印があるので73年頃のプレスです。


Beatles For Sale(AP-8442)

1965年にビートルズ’65”というタイトルでリリースされました。ジャケットと邦題こそ独自のものですが内容はイギリス4thアルバム”Beatles For Sale”と同じものです。レーベルがアップルになっているので69年以降の再発盤です。ジャケットは表面にコーティングがされたものなので初期のプレスかなと思いましたがレーベルには3AWという刻印があるので73年頃のプレスでしょうか?


Red Rose Speedway(EAP-80813)

1973年にリリースされたウィングスのセカンドアルバムです。同年からは会社名が東芝EMIになるので東芝音楽工業時代末期のレコードです。ただし、品番の頭文字は間もなく行われる社名変更を見越してかそれまで使われていた”AP”ではなく”EAP”になっています。マトリクスには3-6Wという表記があり、73年のプレスであることが分かります。


一部詳細不明の盤もありましたがおおよそのもののプレス時期は分かりました。


73年以降の東芝EMI時代のレコードはまた後日。