サイン……? | 余命3ヶ月だったバンドマン

余命3ヶ月だったバンドマン

Candy Vox Music 統括とLa'cryma Christi LEVINさんのローディー ケンツのBlog

昨年、いつ頃だったか

掃除機をかける際に、デスクの脚が乗っかってしまっていることに気付いて退けようとした。

が、

「もしかして、わざと?」

ベッドのケンツに尋ねた。

「うん」

「滑るもんね」

寝ているケンツを越えてベッドから下りる際、着地で何度かよろけた経験があった。

 

(オキノームが強いのかしら…)

ケンツのことに関しては、そんな不安も少しあった。

 

数週間後、対角線上にも椅子が乗せられた。

心配になりつつも、

「滑るから?」

「うん」

滑り止めをカーペットの下に敷こうとしたが「いい」と断られた。

そういうところは頑固だった。

 

もしかしたら、あの頃既に脳転移があったのではないかと思ってしまう。

今となってはわからない。

 

医療用麻薬の副作用でふらつきのことも聞いていたから?

3ヶ月毎の評価で脳転移はないと言われていたから?

筋力が落ちたせい?

考えないようにしていた?

 

わからない。

 

 

 

 

 

夢の中のケンツは力強く温かかった。

アラームの音でうっすらと意識が戻りかけ、夢であることに気付きつつも

(戻りたくない)幸せの中で現実を拒む。

そんなことを何度か繰り返した。

 

 

時間が癒してくれる?

寧ろ、辛くなる瞬間が増えた気さえする。

後悔ばかり。

キリがない。

 

 

 

こんな思いをする人が増えるのはもうたくさん。

少しでも気になることがあったらお医者さんに相談してみて良いと思います。

忙しそうなお医者さんを目の前にすると、なるべく努めていた私でさえ

言い出せないこともありました。

私以上にケンツはそうでした。

「眠そうやったから」「疲れてそうやったから」

気を遣い過ぎるのです。

「自分のことだと言えないのに、人のことだと訊ける」

そんな話をよく聞きます。

自身のことは勿論、おせっかいでもいいと思います。

 

「あの時ああしていれば……」

「こうしていたら……」

 

日々こんな思いに苛まれなくてすむように過ごしてください。