BGM:Carl Douglas『Blue Eyed Soul』
本日10月21日、玄光社より小林邦昭さんの生涯をご自身の証言とともに綴った『虎ハンターの美学』が発売となります。すでに当ブログでもその告知と発刊にいたる経緯を書きましたが、ここでは書籍として出せたことに対する思いを語らせていただきたく思います。
本書は小林さんについての一冊ですから、鈴木健.txtの私的な話は「あとがき」に留めています。唯一、本章の中ではフィッシャーマンズ・スープレックスをリアルタイムで目撃したファンの立場から、それにまつわるエピソードを書いたぐらい。ただ、全体から抑えきれぬ“虎ハンター愛”はにじみ出てしまっていると思われます。
それと同じぐらいにこだわったのが、マーシャルアーツパンタロンについての細かい記述。どの試合でどのタイプ(赤と黒の2種類が代表的ながら、入っているラインの色がそれぞれ違う)を着用したか、記憶をたどったり当時の記事を確認したりして日本凱旋帰国前のメキシコ時代までさかのぼり「パンタロン史」を文献としました。
一般的には小林邦昭の闘いの歴史というと、タイガーマスクのライバル時代と誠心会館勢との抗争が代表的なものとしてあげられると思われます。でも、その足跡をつぶさに検証すると史実的には大きくクローズアップされていないところで、実はソウルフルなドラマがあったことが掘り起こされました。中でも平成維震軍時代、野上彰(現・AKIRA)選手と繰り広げた試合の中で、小林さんはプロレスに対し新たな価値観を見いだせたことがうかがえました。
またメキシコ修行時の記録も、今のようにネットを通じてすぐ情報が入ってこない時代だったため当時は断片的にしか記事になっておらず、それを“ドクトル・ルチャ”こと清水勉さんのご協力を得て発掘する作業がとても楽しかったです。調べれば調べるほど、当時の小林さんがメキシコで残した実績の凄さがわかりました。
そうした内容に関してはとにかく読んでいただきたく思うわけですが、本書を上梓するにあたって嬉しかったのは小林邦昭さんとの共著という形にしていただいたことです。ファンになった自分をプロレスから脱することができぬところまで引きずり込んでくれた方と永遠に名を並べるわけですから、光栄などという既成の言葉では追いつきません。
あとがきにも書きましたが、あこがれの存在と同じ業界に長くいながら私は本書の製作へ携わるまで小林さんとの接点はほぼありませんでした。それがなんという運命なのか、虎ハンターの功績を後世に残すための本を書く使命を仰せつかったのです。
巻頭に掲載された小林さんと佐山サトルさんの対談から取材は始まったのですが、その席でお二人とのスリーショットをカメラマンさんに撮影していただきました。以後、小林さんへの単独インタビューでは仕事に徹する必要があったため写真をお願いしていません。
だからこのカットが生涯唯一の、小林さんと撮らせていただいたものとなりました。何人(なんびと)たりとも入り込めぬお二人の関係性を思えば、その間にはさまるなどおこがましいのですが(本書には掲載していないアザーカットです)、完成できたことを小林さんにご報告する意図で公開させていただきます。

▲2023年12月23日、帝国ホテル「中国料理 北京」にて
あとがきでは「私が愛した小林邦昭に伝えらなかったこと」と題し、本書が完成した時にご本人へ明かそうと決めながら果たせなかった事実を書いています。そう…そうなんです、おそらく本書の完成を誰よりも楽しみにしていたのが小林さんだったのに、ご本人に読んでいただくことがかなわなかったんですよね。
お手元へ届けるさいの「ありがとうございました」も言えなかった。だからこのショットを見るたびに、その言葉を唱えるようにします。
ご本人とともに、本書を心待ちにしていたと思われるのが長女の伶衣さん、次女の彩花さんだったと思われます。小林さんとの別れがあったあと、気持ちを立て直して原稿へ向き合うにあたり支えとなったのが、お二人の存在でした。
こちらが顔もわからぬライターでありながら、出版を止めることなく了承いただいたことを感謝するとともに「小林さんの証が世に出るのを望んでいる」と受け取り、それを原動力とし突き進めたのです。製作後半の段階で、書きあがった原稿に目を通していただいたのですが、その伶衣さんによるご返信はお父様に対する愛情と誇り、そして本に対する熱量が伝わるものでした。そればかりか、大切な思い出である父子の写真もご提供いただきました。
ですからこの作品は小林さんと私だけでなく、虎ハンターが父の顔となった時に愛したお二人も含めた共著と受け取っていただきたく思います。
それ以外にも特別手記(聞き書きではなく、ご自身の手でしたためたもの)を寄稿いただいた齋藤彰俊さんや、アントニオ猪木パネルにまつわる秘話について語っていただいた棚橋弘至選手、そして「小林さんの本のためなら」と対談に応じていただいた佐山サトルさんをはじめ、多くの方々のご協力、ご理解のもとこの書は世に出ます。それらに関してもあとがきに記していますので、最後のページまで一言一句、噛みしめていただきたいです。その全員が小林さんに対する深い思い入れを持ち、私に託してくださいました。
個人的には「自分の手で書きたい」と思っていた中から2人もの功績と物語を、同じ年に書籍として出すことができました。3月に発刊した『髙山善廣評伝 ノーフィアー』と執筆時期が重なったこともあり多くの皆様にご迷惑をおかけしましたが、この2025年は私自身の人生において『週刊プロレス』編集部へ入った1988年に匹敵するほどの特別な年となった気がします。
43年前の10月21日は、虎ハンター伝説が始まる前日です。その日、小林さんは和歌山県立体育館で翌日にタイガーマスクとシングルマッチで対戦するレス・ソントンとの一騎打ちが組まれていたことも今回、記録を掘り起こさなければ知らぬままでした。
翌22日、広島県立体育館にて入場時のタイガーマスクを襲撃したことで、小林さんの人生は劇的に変わりました。43年という歳月が経って自身の行動が本になるとは、想像もしていなかったでしょう。足跡をまとめた一冊ではありますが、生前遺した小林さんの言葉をもとに当時の思いを現在の視点で読み解くと、記録の裏からにじみ出る時代性や物語を味わっていただけるはずです。
そしてそこで得た自身の思いをSNS等を通じ世に広めていただくことによって、小林さんの存在がなおも知れ渡り、語り継がれていくと思うのです。それが小林邦昭という己の美学に生きたプロレスラーを図らずも最後に取材した立場となった人間の、心からの願いです。

〔書名〕虎ハンターの美学
〔著者〕小林邦昭/鈴木健.txt
〔発行〕玄光社
〔価格〕単行本四六版288ページ/2200円+税
〔発売予定日〕2025年10月21日
〔内容〕
・はじめに――本書を「追悼本」として書かなかった理由
・写真で振り返る虎ハンター小林邦昭ヒストリー 写真提供:小林邦昭
・巻頭対談~小林邦昭×初代タイガーマスク 佐山サトル
・第1章:虎ハンター紀元前 生い立ち~新日本若手時代
・第2章:メキシコ遠征で残した実績
・第3章:タイガーマスクのライバルとして
・第4章:ジャパンプロレス設立から全日本参戦
・第5章:誠心会館との抗争。そして平成維震軍へ
・第6章:佐山との再会。ダンディズムに殉じた引退
・第7章:猪木のパネルを外した真相と思い
・特別手記:齋藤彰俊「あなたとの出逢いは、自分の人生にとって『宝』でした。」
・あとがきに代えて――私が愛した小林邦昭に伝えられなかったこと
・小林邦昭vs佐山サトル/初代タイガーマスク シングルマッチ全戦績
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