デニムショートパンツ穿いてテンガロンハットかぶってそんで七日町の歯医者だかバレエ教室だかに小白川の貯金局前のバス停からバスに乗っていたのが小学五年生の時。 

秋だから虫が鳴いていたし今と違って肌寒かった。 

まだ生理が来る前だから生理前の女の子だけが持っている独特のあの感覚があって、言葉では言い表せない郷愁みたいものを感じては秋の黄昏に浮かぶ文翔館を見ていた。 

あの憂いって 

「自分が捨て子が貰い子で本当はどこか別な家で生まれてここに貰われていったんじゃないか...」
という不安。みんな(洋子ちゃんとか)は私がしぞーかのデパートの受付嬢と、よく似ているから捨て子貰い子のはずはないというけど...でもそれを聞いてほっとしたり...。 

  でも小学校五年の時のあの不安ってたぶん間も無く生理が来て否が応でも「女」を生きなければならないという不安なのかもしれない、


 いつだったかエルメスのカレ(スカーフ)を巻きて帰ってきてテレビをつけたら美輪明宏がまるで

「タロットカードの女教皇」

みたいな顔をして終わってきて、久米宏に 

「女は幻想に過ぎません
女という生き物は実在しません」 

といっていたのを見てなにかあの頃...

「これから間も無く生理が来て否が応でも女を生ききなければならない」

という不安の真ん中にいたあの時を思い出したことがある。

できれば生理が来ないでほしいし「女」を生きたくない...デニムショートパンツを穿いていたあの頃の私は校庭のプラタナス並木で一人立ってそんな憂いに身を任せていた。 

 そんな私は伝説の大谷長吉シェフの「フランス菓子の本」
を愛読しては洋菓子、というより大谷長吉の世界にどっぷりと浸かってきた。
この本は今は凄い値段で取引されていますね💦