笑うてはりますか~
マイ葛桶を手に入れたいけんすけ福のかみでござる
狂言の舞台には基本的に大道具と呼ばれる背景のセットや装置は無うござって
小道具も最小限のもので、しかも多くは”見立て”と申して《これは○○であると思ってくだされ》というお約束で成り立つものが多いのでござる
もっとも多く遣われるのが扇で
たいていの狂言出演者が腰に差したり、手に持って出るのでござるが
その遣い方と申しては
このようにあおぐために遣うこともあらば
筆に見立てて書きものをしたり
柿の木の梢に見立てて隠れたり(^_^;)
↑隠れてるつもりの山伏さんでござる
ほかにも
水あめをからめとる棒になったり
隣りの家との仕切り板やのこぎりになることもござる
そしてもう一つ
大切なのが葛桶という桶でござる
上の写真で山伏が乗っている黒いものがその葛桶でござるが
これはもともと、鬘(カツラ)を保管するための容れ物で
直径は30センチ~、高さ40センチ~ほど(大小あり)の木製の桶でござって
表面は漆塗りで金蒔絵をほどこしてあるものが多いようでござる
上部5センチほどのところが外れて蓋となっており
この部分だけで大きな盃として酒盛りによく遣われるのでござる
この葛桶の一番の用途は床几と申して簡易の椅子として遣われまする
他には先だってお話申した『附子』では砂糖壺
『茶壷』と申す狂言ではそのまま茶壷として背負われ
『瓜盗人』では案山子の胴としてその上に面を掛けて遣われまする
先ほどの場合は柿の木そのものだったりもします
この桶は桐や桧でできているそうで、上に人が乗れるほど強度もあり
表面は漆、蒔絵などの加工もされているため
誂えるにはちと値がはるようでござる
古道具屋にてときどき探しはいたしますが・・・まだ逢うことがかなわいでおりまする
どうぞ狂言をご覧になる折には
想像力と思いやりのこころでもってご覧くださりませ