「イングロリアス・バスターズ」 | 小野寺昭憲オフィシャルブログ - 破壊と創造の記録 -

「イングロリアス・バスターズ」

 監督名を伏せて観ても誰が監督したか明確に分かる映画というものは多くはありません。そこにはその監督唯一無二の強烈な個性と作家性が封じ込められている必要があるからです。


 92年のデビュー作「レザボア・ドッグス」から数えて17年、その間に彼が監督した映画は7本。決して多くはありませんが、全ての作品はまさに彼にしか創り得ぬ、彼だからこそ創り得た映画でした。


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 ──クエンティン・タランティーノ監督の最新作「イングロリアス・バスターズ」 を劇場で鑑賞しました。一瞬たりとも目が離せぬ、タランティーノワールド炸裂の素晴らしい映画でした。


 5章構成の練られた脚本、目を見張るキャメラワーク、際立つ異常なまでのキャラクター、ウィットに富んだセリフ回し、R-15指定の凄まじいバイオレンス、随所に織り込まれた映画へのオマージュの数々、そして圧巻のラストシーン。・・・私の中では「パルプ・フィクション」に匹敵する面白さでした。


 最初タランティーノが戦争物を撮ったと聞いていたので一体どんなものかと公開前から非常に気になっていましたが、蓋を開けてみればナチス占領下のフランスを舞台に史実ベースでありながら完全なオリジナル──と云うよりタランティーノの手によって全く別の歴史が創り上げられていたのです。


 ブラッド・ピットを筆頭に役者陣の演技も素晴らしいものでしたが、白眉は本作で今年のカンヌ国際映画祭男優賞を受賞したオーストリアの俳優クリストフ・ヴァルツでしょう。“ユダヤ・ハンター”の異名を取るSS将校の役どころでしたが、その圧倒的存在感は観る者の視線を釘付けにする或る種異様なオーラを放っておりました。


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 あと普通に感心したのが、当然の如くフランス人はフランス語で、ドイツ人はドイツ語で、アメリカ人は英語で話しており、また二カ国語を話す人物は両方を使い分けるなど、三カ国語のセリフが飛び交い絶妙な掛け合いを見せていたところでしょう。


 従来のハリウッド映画と云えば──例えば同じナチスを扱った映画「ワルキューレ」の記事 でも書きましたが──舞台がヨーロッパやロシアでも何故か全員英語を話すという不可解さが腑に落ちませんでした。しかしそれは逆にセリフの妙を削いでいたのだという事実を、本作で見せつけられた気がします。


 何はともあれ、前評判通り『タランティーノの最高傑作』という謳い文句は間違いではありません。是非ご覧頂きたい傑作です。


【「イングロリアス・バスターズ」予告編】