恋をしたのは   その3 | チェ・ヨンよん4

チェ・ヨンよん4

チェ・ヨンに夢中の管理人です♪
完璧に管理人の妄想のお話です。
感じ方は人それぞれ。
自分と違う、と思った方はどうぞお引き取り下さいませ






あの日から
イムジャは東屋に姿を見せなくなった

たまに侍医の使いに行ったり
王妃様のお傍にから離れられないときなど
来ないときはあったけれど
たいていそんな時はそのようなイムジャが来ない理由が
どこからともなく耳に入っていた
それが今回は・・・ない
ということは
意図的にイムジャが東屋に来ない
・・・俺に会いたくない、ということだ


会えなければ、逢いに行くまで

馬鹿みたいな話だが、イムジャの姿が見えればそれだけで安心し
見えなければ落ち着かない

俺がこんな感情に左右されるようになるとは
自分でも呆れてしまうが仕方ない

典医寺のあの方の部屋が見える立木の陰から
見つからないように扉を見つめる

一目でも見れば安心した
そうして、持ち場に戻る
女々しいと言われようがそれでいいのだ

傍にいてくれ、とは軽々しく言えない立場なのだから

今までが、贅沢だったのだ
振り返れば東屋で会うのがイムジャからの提案だったとしても
俺は受け入れるべきではなかったのかもしれない
近づきすぎた

欲が出る前にこうなってよかったのだ

手放せなくなる前で。











「ヨンァ」
このところイムジャには会わないが
セヨンヌナにはばったりと鉢合わせすることが多い

「良く会いますね、ヌナ。」
「ええ、王妃様がどうしても来週までに今の刺繍を仕上げたいらしくて。
このところ日参しているのよ」
「それはそれは」
「ねえ、ヨンァ。聞きたいことがあるの」
「聞きたいこと、と申されますと?」
ヌナは辺りを見回し、傍に誰もいないのを確認すると
一歩俺に近づき、言った
「昨日、医仙さまもご一緒だったのね。
私がヨンァのお母様から刺繍を習っていたことをお話したら
すごく驚いていて。
とてもテジャンとご縁があるんですね、っておっしゃられて。
それで腑に落ちた、という顔をなさるから」
「腑に落ちた?」
「ええ、何度もうなづいて、納得された顔をするのよ。
なにかあるのですか?と尋ねたら
以前、あなたが好きになった人の話をしてくれたのだけれど
お相手のことは教えてくれなかったとか。
きっとその相手は私だったんだ、なんておっしゃられて」
「はあ?」
イムジャはなにを言っているんだ?
「私もびっくりして、そんなことはありませんよ、とお伝えしたんだけど」
くすくす笑う
「だって、あなたと会っていたのはもう20年も前になるかしら。
恋とかまだ知らない前なのに、ねえ」
イムジャは時々突拍子もないことを言う
で、その妄想を信じ込んでしまう。悪い癖だ。
「医仙さまに弁解する時間もなくて、お別れしてしまったのだけど。
あなた、会ったら説明して差し上げて」
とりあえず、うなづく
が、会う時があるだろうか?
「医仙さまはきっと・・・」
そう言って、ヌナが俺の顔を見つめた
あまりにじっと見つめるので、居心地が悪くなる
「なんですか、ヌナ」
「ううん、いいの。私が出しゃばることじゃないわ」
ふふふ、と嬉しそうに笑う
「いい、ヨンァ。殿方には言わなければならないときがあるから。
その機会を逃しちゃダメよ。」
ヌナが言っていることの意味がわからず、俺が突っ立っていると
ヌナは俺の背中を大きく叩いてその場から去っていった

「なんなんだ」
ヌナの去った方向を俺はじっと見つめ続けた





次の日

やはり、またイムジャは東屋に来なかった
昨日のセヨンヌナが言っていたことを
わざわざ訂正しなくてもいいとは思うが
そういえばヌナとの関係をイムジャに伝えていなかったことを思い出す
珍しく俺が仲よさげに女人と話しているのを見て
イムジャがいろいろ妄想をたくましくしているのは
想像に難くない

「会うか・・・」

イムジャに会うのが、何となく怖かった
どうしてだか臆してしまう
自分を殺そうとする人間と対峙するのは怖くないのに
か弱い女人のイムジャに会うのがどうしてこんなに怖いのか

嬉しいようで怖いのだ

会う理由はできたのだ
会いに行っても、よかろう?


意を決して、立っていた立木の前を通り過ぎ
イムジャの部屋の扉の前に立つ

夕飯のあと、この時間ならいるはずだ
大きく深呼吸する

開けようとした、そのとき
中からイムジャの大きな笑い声が聞こえてきた
かぶさるように、低い男の声も

扉を引く手が、止まった

男?

誰だ?

むくむくとどす黒いものが湧きあがる
そっと扉から離れ、窓の側に寄る
影が映らないように気をつけながら窓を少しだけ開けた

卓が見える
イムジャの後姿
いつもは俺が座っていた椅子の上に座る、男

何故、お前が?

俺は窓から離れると、音を立てずにイムジャの部屋から離れた



東屋の長椅子に寝ころぶ
針金のような月が中空に浮かんでいる

まさか、お前がいるとは

聞き馴染みのある笑い声だったはずだ
なんでお前がいるんだ、と部屋に入ろうと思えば入れた

けれど
楽しそうに笑っているイムジャの背中に
先日俺と別れた時の怒っている背中が浮かんで
躊躇してしまった



「何やっているんだろう、俺は」


俺ではない、あいつと笑っているイムジャ
距離を置かねばならないとおもっているくせに
いざ距離ができて
俺ではない男と笑っているのを見ると
無性に腹が立ってたまらない

針金みたいな細い月をじっとみつめる

いらいらが少しづつ収まっていく
頭が冷えていく

あのまま部屋に入ったら、あいつを殴ってしまったかもしれない
我慢して正解だ


「そこにいるのは、チェ・ヨンか?」

声がした
のっそり起き上がる

月明かりの下見えた姿は
先ほどイムジャと笑っていた友、アン・ジェだった