健太は沙也夏が指差した方角を見た。
「あれっ!」
 健太は下を見て、びっくりした。小綺麗な小さいホテル風の建物が建っている。もちろん白い砂浜の上にだ。
その建物は淡いブルーカラーで海にピッタリの感じだ。
「あそこが私の仕事場なの」
「こんな所にホテルがあるなんて思いもしなかった」
「ホテルとはちょっと違うんだけど。でも、おそらくここに建物があるなんて気づかないでしょうね。だってこの石段だって気がつかないんだから」
「そうだよね。こんなきれいな砂浜なのに人ひとりいないし」
「さあ、降りましょう」


 健太はわくわくしながら石段を降りた。あのホテル風の建物にとんでもない感動が待ってるような気がしたのだ。
 石段を降りきり、砂浜にふたりで立った。
心地よい潮風が体を吹き抜け、穏やかな波の音が聞こえた。
「海だ」
「海ね」
 ふたりは単純な言葉を繰り返した。単純だが、今ふたりの気持にはこの言葉が一番似合っていた。
 海は太陽の光を浴びてキラキラと輝いていた。たしかに本土の海とは違っていた。澄みきったブルーとまではいかないが、ブルーであることに間違いはなかった。
「健ちゃん。こういう海の情景が好きなんでしょ?」
「うん」
「でも、私はここで見る夕陽の海が好きなの。海原がオレンジ色に染まっていく様子はほんとにきれいよ」
「そうだろうね。俺も吹上浜で見た夕陽を思い浮かべて詞を作ったことがあるよ」
 それからふたりは腰を降ろして、しばらく海をじっと見ていた。
ゆっくりとした時間がふたりの間を流れていった。


 ふと健太は海を見ながら言った。
「キスしたい」
 健太は今の気持を素直に言った。
「うん」
 沙也夏も海を見て答えた。