三十分ばかり車を走らせると農場が見えてきた。
「あそこがヒル・トップ牧場だ」
 エデイはそう言うと、農場の手前に車を停めた。
「農場の前は車でいっぱいだろうから、ここからは歩いていこう」
 エディと沙也夏は心地よい風を受けながら、歩きはじめた。
「サヤカ、この農場はピーターラビットの生みの親、ベアトリクス・ポターのアトリエだったとこだ」
「じゃ、ここでピーターラビットは生まれたの?」
「いや、そうじゃないんだ。〝ピーターラビットのおはなし〟で得たお金で、最初に購入した土地らしいんだ」
「なんか夢のない話ね」
「そうでもないぜ。まあ中に入ってみよう」
 中に入り、旧居と花々に囲まれた庭を見て沙也夏は感動した。まるで別世界に迷い込んだようだった。
「サヤカ、この庭に見覚えないかい?」
 エディが聞いた。
「見たような感じはするけど、よくわからない」
「おかしいなぁ。ピーターラビットが好きなら、すぐわかるはずなんだけどな」
 エディは不思議そうだった。
 沙也夏は苦笑いしながら言った。
「エディ。実は私、ピーターラビットの本読んだことがないの」
「はぁ・・・?よくそれであんなにはしゃいでたな?」
 エディは呆れているようだった。
 それからエディは、ここの庭はポターの童話でてくる風景そのものであることを説明し、〝ピーターラビットのおはなし〟もかいつまんで解説(?)した。
 沙也夏はエディの話を聞きながら、目は庭の花に釘づけだった。
 一時間ほどヒル・トップ農場で過ごし、ポートホール・イーティグ・ハウスというレストランで遅い昼食をとった。ここでは、オーナーお薦めのラザーニヤ・ランチを食べて一息ついた。
 時計の針は三時を回っていた。