「そうだった。あの頃はメアリーに迷惑のかけっぱなしだったよ。私はエディと逆だったんだ。そこそこ走れるんだが、思いきりの良さがなくていつも三位ぐらいのところをうろうろしてた。そのうちに歳は食うし、F1どころかF3000でも走れるかどうかという状況になってしまったんだ。このままじゃいけないと思って、たしか三十になった時、思いきって賭けにでたんだ。トップをいくマシンとラスト五周、大バトルをやった。心臓が飛び出るかと思ったよ。そしてわかった。これがレースの醍醐味かってね。バトルして勝つということは素晴らしいものだよ。だが、気づくのが遅すぎた。やっとレースの喜びがわかった時にはF1にチャレンジできない歳になっていた」
「冷静さとチャレンジ・スピリット。このふたつを兼ね備えたドライバーが真の勝利者になることができる。ミッシェルはそのことを俺に教えてくれた。チームをクビになって一番最初に思ったのは、誰かと話したいということだった。それで頭に浮かんだのはミッシェルなんだ。ミッシェルとは話をしたことはなかったが、一度話をしてみたいと思っていた。俺とミッシェルは互いの想いをぶっつけあった。俺はチームが決まっていなかったし、ミッシェルも今のチーム体制に疑問をもっていた。それなら、一諸のチームでやらないかという話になったんだ。それがお互いのプラスになるしな。その頃、俺のところにいい話があったんだ。H社が俺の乗るマシンにエンジンを提供するという話だ。だが、いくらエンジンが一流でもそれをチューンするチューナーがいないんじゃ話にならない。そのことをふたりで話していたら、ふとミッシェルが言ったんだ。ミスター・スドウはどうだろうかって」
「エディからH社のエンジンが提供されるって話を聞いて、ミスター・スドウならやれるかもしれないって思ったんだ」
沙也夏はミッシェルとエディの話を聞きながら、だんだん話が飲み込めてきた。だが、まだ納得がいかないことがあった。いくらエンジンとチューナーが一流といっても、自分達のチームは三流もいいとこだ。そういうところに、ワークスをやめてくるだろうか。
そのことを沙也夏はミッシェルに聞いてみた。
「サヤカ、逆に聞きたいんだが、ワークスにどういうイメージをもってる?」
「う~ん。チーム体制がしっかりしてて・・・エンジンがタフで、常勝を使命づけられてるチームってところかな」