今日の沙也夏は長い髪をストレートにして、清楚な感じだ。
 健太は変にドキドキして、何か言おうとしたのだが、圭子が口を挟んできた。
「健太、いつのまに親しくなったのぉ。それに、今日沙也夏さんが来るなんて、一言も言ってなかったじゃない。入口で沙也夏さんと会ってびっくりしちゃった」
「いや、言おうと思ったんだけど・・・約束したのが三日前だったもんで。圭子も忙しそうだったし」
「でも、私には言えたはずよね。会社では嫌というほど顔を合わせているし」と今度は純子がニヤニヤしながら言った。
「まあ、いいじゃないっすか。健さんにもやっと恋人ができたんだし」と淳之介が助け船をだした。
「こらっ!淳之介、違うだろ!それじゃな、フォローになってないぞ」と健太は口をとんがらせた。
 沙也夏は微笑みながら、健太たちの兄弟ゲンカ風(?)の話を聞いていた。
「何だ、何だ。そこで何をたむろしてるんだ?」と言って、ヒロシとジョンが入ってきた。
「さ、練習、練習。ほら、純子と圭子は早くセッティングしろよ」
 健太はヒロシたちが来たのを幸いに、矛先を変えて言った。

ヒロシもまた沙也夏を見て、言った。
「ん?淳之介、今日もまた違うお客さんか?」
「そういつもいつも連れてこないっすよ。健さんですよ」
 ヒロシは健太と沙也夏を見て唸った。
「ほんとに健太のお客さんか?んー、信じられん」
 健太は「ふうー」とため息をついて〝これじゃ何を言ってもムダだな〟と思った。
「オー、ビューティフルネ。トテモキレイナヒト」とジョンが英語か日本語かわからないような言葉で言った。
 ジョンは日本語はひととおり喋れるのだが、バンドのメンバーと話す時は、英語と日本語をごちゃ混ぜで話す。
「ありがとうございます。外国人の方にそんなこと言われたの初めてです」と沙也夏は少し顔を赤らめた。
「さあさあ、前置きはもういいだろ。そろそろ、俺に紹介させてくれ」と健太は沙也夏を紹介し、メンバーもひとりひとり自己紹介して、ようやくみんなセッティングを始めた。