さらに淳之介は追い打ちをかけるように言った。
「俺、さっき納得いく仕事をしたいと言ったっすよね。それと同じようにバンドも自分が納得いく音楽をやりたいんっす。それが健さんのバンドでやることなんっす」
淳之介は真剣だった。
健太はこれじゃごまかしの返事はできないなと思った。
健太は目の前にある焼酎を一気に飲み干し言った。
「ありがとう。それほど俺たちのバンドのこと思ってくれて・・・とても嬉しいよ。だけど、すぐにイエスというわけにはいかない。今はちゃんとバンドにはドラムがいるし、それに君の演奏も聞かなければいけないし。いずれにせよ、今ははっきり言うとノーだ」
「それはわかってるっす。じゃあ、こうして下さい。もし、今のドラムの人が辞めるようなことがあったら、まず俺に声をかけて下さい。それまでは俺待ちます。どこのバンドにも入りません。その上で演奏を聞いて下さい」
健太は酔いが醒めてしまう感じだった。
それほどのバンドなのだろうか俺たちは・・・と思った。
結局、健太は淳之介に今のドラムのメンバーがやめたら連絡すると約束して、その夜は別れたのである。
それから二週間後、人の出逢いとは不思議である。ほんとに、ドラムのメンバーがやめてしまったのである。
約束どおり、健太は淳之介に連絡をし、演奏を聞かせてもらうことにした。
テクニック的には並みといったところだった。ただ、ドラムを叩いている時の淳之介の表情が良かった。いかにも、楽しそうに叩いていた。ドラムを叩くのが嬉しくてたまらないといった感じだった。
健太も他のメンバーもその表情が気に入り、バンドの一員になってもらうことになったのである。
そうなのだ。音楽は楽しむのが一番なのである。