圭子はびっくりしている様子だ。

当たり前である。この時間に、女性を抱きかかえて、自分の知り合いが来ているのだから。

「どうしたって、急患だよ」と健太は言った。

 圭子は健太とその女性を見て、言った。

あんた!まさか交通事故を起こしたんじゃないんでしょうね」

「交通事故なんか起こしていたら、こんな平気な顔してここに来るかよ!この人が道端で足をくじいているみたいだったから、連れて来たんだよ!」

「あぁよかった。私、てっきり交通事故かと思っちゃった。ほっとしたわ」

 圭子は本当にほっとした様子である。ほっとする前に、早く彼女を診察室に入れたほうがいいと思うのだが。

「あのぅ、そろそろ降ろしてもらったほうが・・・」と彼女が、恥ずかしそうに言った。

「あっ、すみません。健太、早く診察室に入れて。先生に早く来てもらうように電話するから」

 健太は彼女を抱きかかえたまま、診察室へ入り、ベッドに彼女を降ろした。

「もう、ここに来れば安心ですよ。看護婦はあんな感じですけど、先生の腕は確かですから」と健太は、彼女を元気づけるように言った。

 彼女はぎこちなく笑っていた。

「あんな感じで悪かったわね」と圭子が、健太を睨みつけるようにして、診察室に入ってきた。

「聞こえたか。ハハハ・・・冗談だよ。冗談」と健太は、照れ笑いしながら言った。

「さあさあ、患者さん以外は出て行って。健太、あんた会社はいいの?」

「あぁ!会社に電話するのをすっかり忘れていた!」と健太は公衆電話へ急いだ。