初めて鬱を感じたのは24歳の頃だった。それまで性格的に細かいところがあり、気を揉むとか、思い悩むとか、塞ぎ込むとかいうことはあったが、うつ状態の経験は全くなかった。


初めの結婚の時から数ヶ月、新しい勤めに行き始めた時だった。毎朝通勤の車の中でラジオを付けていた。6時半になるとお知らせがあって違う番組になる。その時だった。


突然憂鬱な気分に襲われた。


ラジオを消してなんとか現場に向かった。その日はそれで終わった。


次の日、同じことが起きた。今度は憂鬱さがさらに強くなり、車を路肩に止めなければならなかった。


少し椅子を倒し横になって様子を見た。ダメだ。その頃携帯電話などなく、会社にどのように連絡したのか記憶にないが、とにかく行けないことを何かしらの方法で伝えた。


この日以降、繰り返しこのようなことが起き始め、同じ時間のこのラジオが聞こえてくると鬱陶しいほどの抑うつ感が現れるようになってしまったのだ。仕事に支障が出るようになったぼくは、恐れを感じ約半年ねばったのち、実家の近くに転居することを決めた家庭の中はギクシャクしており、眠らぬ夜が増えて行き、転居は半ば強引に決めた。24歳の秋だった。