第八章・無意識の眉間の縦皺、舌打ち、溜息連発
舌打ちや溜息は、ただの癖として片づけられがちである。
しかし職場では、それ以上の意味を持つことが少なくない。
言葉にしないまま、感情だけを周囲へ放つ行為だからだ。
■何が問題なのか
舌打ちや溜息には、しばしば次の感情がにじむ。
・イライラしている
・不満がある
・誰かを責めたい
・面倒くさい
・自分ばかり損をしている
本人が「無意識だった」「癖だ」と言っても、受け取る側には小さな威圧や拒絶のサインとして届きやすい。
■職場で起こる悪影響
① 空気が一瞬で重くなる
たった一度の舌打ちで、その場の緊張感は一気に高まる。
② 周囲が不要に萎縮する
若い人や気を遣う人ほど、「何か悪かっただろうか」と自分を責めやすい。
③ 集中力が削られる
業務と関係のない感情ノイズが、全員の思考を乱す。
④ 負の連鎖が起きる
機嫌の悪さは、驚くほど周囲へ伝染する。
■昭和気質との関係
かつての職場には、こんな空気もあった。
・不機嫌な人ほど怖い人
・怖い人ほど力がある人
・周囲が機嫌を読むのが当たり前
・感情管理より我慢が美徳
その結果、機嫌の悪さが“権威”として通用してしまう場面もあった。
しかし今は違う。
感情を撒き散らさない人。
空気を荒らさず、落ち着いて対話できる人。
そういう人こそ、成熟した人として評価される時代になっている。
■実体験として忘れられない光景
平成10年、あるハウスメーカーに入社したときの上司が忘れられない。
眉間には深く刻まれた縦皺。
まるで自分を渋いアクション俳優だと思っているかのような険しい表情だった。
そして、何かあれば舌打ち。
ペンを落としただけで、社内に響き渡る「チェッ!!」
その瞬間、空気が変わる。
数秒前まで動いていた職場全体が、どこか淀んでいく。
嘘だと思う人は、静かな部屋で一度試してみるといい。
たった一つの音で、場の温度は変わる。
さらにその上司は、溜息も連発していた。
気づけば周囲まで、つられて深く息を吐いている。
まさに、感情の公害だった。
■その後に起きたこと
結論から言えば、その会社は入社一年手前で退職した。
そして後に、約9か月後に破産宣告となった。
もちろん原因が舌打ち一つだったわけではない。
だが、空気の悪い会社には、空気が悪くなる理由がある。
■本質
何も言っていない。
だが、舌打ちと溜息だけで職場全体に命令している人がいる。
声を荒げる人より、無意識に空気を汚す人の方が厄介なこともある。
組織は、数字だけでは壊れない。
日々の空気の積み重ねでも壊れていく。
