僕の会社はイベント会社なのだが、まだ新しく、10数名ほどのスタッフしかいない



その中で、最近誕生日を迎えた2人を対象に  「サプライズ誕生日会」を行う事になった


内容としては、2人のスタッフには今日は全員  商品研修があるという名目で会社に呼び出しておいて、ありもしない商品の研修を数十分行った後




「この研修は嘘です(‐^▽^‐)」



と、ネタばらしをして、そのまま近隣の大きな公園まで車で移動して、みんなでバーベキューをしながら誕生日会をするというものだ



数日前から、偽の研修資料を作成したり、バトミントンセットやフリスビーを購入したり、と充実した日が続いていた



最後はその2人の欲しそうなプレゼントの用意も終わり、その日を待つだけだった




しかし、僕にはずっと気がかりな事が1つあった




最近ずっと晴天が続いているというのに、何故かその日だけ40%の雨予報なのだ



まぁ大丈夫だろうと思い計画を進めていたが、日が経つにつれ40%から50%になり、時々雷雨の可能性があるという状況になっていた



そういえば、2人のうちの1人は前に



「僕って雨男なんですよ、ここぞって時は本当に よく雨が降るんです」



と言っていた事があった



そいつだけバーベキュー会場に連れて行かないという事も考えたが、それはサプライズすぎるので、当日まで祈る事にした





祈りが通じたのか、当日は曇りはしていたが雨は降っていなかった



計画通り偽の商品研修が終わり、ネタばらしをした



2人は仕事だと思っていた分、少々面食らっていたが、喜んでいた



早速2台の車で目的の公園まで移動を始めた



渋滞もあり、到着は遅れたものの雨は降ってこなかった



無事に目的地にたどり着いた僕らは、車から降りて深呼吸をした



予想以上に大きかった公園に、みんなテンションが上がっていた



僕もホッとして、あるスタッフに話しかけた



「いや~正直今日雨が降るんじゃないかって心配だったんだよ~」





「そうですね~、しかも今日は涼しくていいですね~これくらいが丁度いい」



なんて会話をした





その瞬間だった




まるで祝福するかのように、空から聞こえてきた





ゴロゴロゴロゴロゴロドンッ





天気予報は的中した



その後、ちゃんと大雨になったが、テントを無料で貸してもらい、何だかんだ普通にバーベキューは出来た



最後はみんなびしょ濡れになりながら、帰宅する事になったが、逆にこれもいい思い出だろうと前向きに考えた




ただ、ほとんど活躍する事のなかった新品のバトミントンセット君やフリスビー君に付いていた水滴を見て、泣いているように見えたのが切なかった









僕の会社の事業部に、イベントを行う会社がある


イベントといっても、新商品等をキャンペーンで紹介して契約をもらったりするお仕事なので、営業みたいなものだ


責任者の立場にある僕は、今まで色んなスタッフを指導した


熱い言葉を言ってくれる人もいれば、言い訳ばかり言う人もいる


言い訳の中で性質が悪いのが、寝坊した時の言い訳だ



「電車が事故で遅れた・・・」



・・・僕は同じ路線なのに、どうしてそいつの車両だけ事故が起きたのだろう?



「ゴホッゴホッ・・・・すいません風邪をひいて・・・」



・・・咳するタイミングで電話するだろうか?



「親戚が亡くなって・・・」



・・・毎月死ぬだろうか?




とっさに言い訳したくなる気持ちは分かるが、寝坊したならしたで、潔く謝るのが1番いいのだと思う



ま、そもそも遅刻しないのが1番いいのだが・・・




今回のイベントは、連休という事もあって、泊りがけで行う事になった


しかも、他のイベント会社と合同で行う事になったので、気合いが入るところだ


僕の会社からは、僕とスタッフのT君と2人で行く事になり、別会社からも2人来て、合計4人でイベントを行った


一緒にイベントを行う会社は、割と新人レベルで、僕らは共にベテランなので、いいところを見せるはずだったが、初日は思った程の成果は得られなかった



その夜、反省会も兼ねて僕とT君は呑みに行った


そこでの話しで、僕らベテランは仕事は当たり前の様に頑張るのだが、昔ほど熱く仕事をしていないんじゃないかという話しになった



T君もかなり呑んでいて


「今までの経験が邪魔をしている、もっと振り切らなきゃ!!!」


と語った


確かにその通りだ


経験を積めば積むほど、「自分はこうなんだ」という、いらないプライドを作ってしまう


経験を積んだらそれを安定させるのではなく、次のステージに行く為に捨てていかないといけないのだと思う


僕もかなり呑んで


「そうだ!振り切ろう!!!」


と語った


結局朝方まで呑んでしまったのだが、最後1時間くらいは2人共「振り切る!!!」しか言ってなかった気がする


そして何とか僕らはホテルに帰り、「明日は振り切ろう!!!」と言って、お互いの部屋に戻っていった








・・・目が覚めると、10時5分だった




イベントの開催時間は10時だった・・・




寝坊した




僕はなかなか現実が分からず、とにかく急いで一緒にイベントを行っている会社の方に電話をした



「もしもし、大丈夫ですか?」



と相手方に言われた



僕はようやく寝坊した現実を受け入れ、どうしようどうしようとパニクったが、言い訳は駄目だ言い訳は駄目だ、正直に事情を話して謝ろうと思い



「も、もしもし、すいません!!!あの・・・その・・・10時を振り切りました!!!」



と言っていた



「・・・そうですね、気をつけて来て下さい」



と言う返事を頂いた




この経験はすぐに捨てようと心に決めた










イベントのお仕事で、スタッフと2人で東京は新大久保に行く事になった


キャンペーンで色々な商品を紹介する仕事で、今回の商品は普段うちの会社ではあまり取り扱わない商品なのだが、開催場所に興味があったので、見学ついでにキャンペーンを行う事にした



「新大久保」



事前に調べた情報によると、別名「コリアン・タウン」と呼ばれているらしい


住んでいる方も、韓国の方が多く、食べ物屋さんもほとんど韓国料理を扱っているお店で、韓国スターのTシャツやら生写真やらが売られているお店が並んでいるらしい



しかも、今は空前の「韓流ブーム」で祝日にもなると、韓国スターのグッズを求めて、全国からファン(特に女性の方)が集まり、どのお店もいっぱいになるそうだ



「暇な奴らだ・・・せめて祖国日本の男子のファンになれよ」




なんて去年の僕ならそう思っていただろう



そう



「KARA」に出会うまでは・・・


韓国の本格派女性グループ「KARA」は、ダンスの魅せ方が素晴らしく、たまたまパソコンで見たYOUTUBEに心を奪われてしまった



だからと言って、グッズを買ったりしようとは思わないが、韓国の雰囲気が味わえる「新大久保」に行く事にワクワクしないはずがなかった



前日ともなると、もし「KARA」と出会ってしまったら・・・の妄想までしてしまい、最終的に、一緒に連れて行ったスタッフはロン毛でイケメンなので、そいつを連れて行くのは辞めようかと思った程だ



実はそのロン毛のイケメン(T君)も最近KARAがいいと言い出している


僕よりかなり遅くに興味を持ったくせに、今では僕よりもKARA事情に詳しい


当日はまた僕の知らないKARA事情を話してくる事だろう・・・


僕も何か用意しなくては・・・



しかし下手にウンチクを語っても、「それは知っている」と言われそうなので、違う角度から攻めてみなければ・・・



という事で、前日僕は一足先に家の近くの韓国料理のお店に行った



これぞ原点だろう



そこのお店は日本人向けにメニューが全てカタカナで記載されていて、味もとても良かった


中でも、鶏肉の中にご飯が入っている「サムゲタン」というのがとても気に入った



当日になり、朝から僕とT君は新大久保に向かう為、車に乗り込んだ


やはりT君はKARAの情報を僕に投げかけてきた


一通り聞いたところで、僕は反撃を開始した


「しかし、韓国料理っておいしいよね。俺はやっぱり「サムゲタン」が好きだけどね~」



と、いかにも僕は毎日食べてる風な雰囲気を出した



「え?サム・・・?何ですかそれ?」


と聞いてくるので、僕はやれやれと言った感じでサムゲタンの素晴らしさを語った



話し終わった後、T君は「そうなんだ~」としか言わなかった



悔しかった僕は


「KARAのメンバーもよく食べてるらしいよ」


と嘘を言って、多少食いついてきたT君の姿を見て多少の優越感に浸った



そうこうしているうちに車は新大久保に到着した


近くの駐車場に停めて、街を歩いてみたが噂以上の人ごみだ



ほとんどが女性だが、手には何かしらのグッズを持っていて、キラキラした目で次のショップを目指して歩いている


さすがに僕らも圧倒され、とりあえずお昼ご飯を食べようと立ち並ぶ韓国料理のお店の中で、比較的空いているお店に入った


ま、空いてるだけあって汚い感じのお店だったが、これもアリかなと思いメニューを見た


昨日のお店と違い、ほとんど漢字で書かれたメニューに僕とTは固まった


その中でも何故かチゲだけはカタカナで書かれていたので、それを発見したT君は


「俺、このチゲ定食にします」


と言った


「あ、じゃあ俺も」


と言いたかったが、午前中に韓国料理を毎日食べている雰囲気を出していた僕が、こんな素人が頼む料理を頼む訳にはいかなかった



「俺はこれにする」


と見た事もない漢字を指差した


「これおいしいんですか?」


と聞いてきたT君に


「まぁわりと・・・」


と言って、不安いっぱいで料理が届くのを待っていた



先に届いたおいしそうなチゲ定食を見て一瞬後悔したが、僕の料理が届いて一口食べてみると、そのおいしさにホッとした



半透明なスープにはダシがしっかり染み込んでいる



中には鶏肉がまるまる一匹入っているが、とても柔らかくておいしい



僕は勇気を出して注文して良かったと心から思った






・・・鶏肉の中からご飯が出てくるまでは




サムゲタンだった





「漢字で書くなーーーーーーーー」



T君が気づいていなかったのがせめてもの救いだった