2022年9月22日
土地利用規制法の全面施行に抗議し
同法廃止を強く求める声明
脱原発・自然エネルギーをすすめる
苫小牧の会事務局長
津田 孝
政府は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(以下「土地利用規制法」)の基本方針や関連政令等を9月16日に閣議決定し、20日同法を全面施行した。
しかし、我々はこの土地利用規制法の全面施行に抗議し、以下に述べるいくつかの理由によって、同法の廃止を強く求めるものである。
土地利用規制法は、
自衛隊基地や米軍基地、自衛隊との共用空港、あるいは原子力発電所等の「重要施設」や「生活関連施設」、「国境離島等」の機能を「阻害する行為を防止する」として、内閣総理大臣がこれらの存する地域で「注視区域」や「特別注視区域」を指定し、区域内の土地や建物(土地等)の利用状況を調査し、「重要施設等の機能を阻害する」虞があると認めた時にはその利用者に対して、利用中止等の勧告や命令等の規制を行えるとし、さらには、規制に従わなければ処罰をするという法律である。
従って、従来自由に行われていた米軍基地や自衛隊の行動、あるいは原発施設などへの監視行動等の市民運動がこの規制の対象になり、場合によっては処罰されうる可能性も排除されない。
とりわけ、同法は区域指定の基準、収集する情報の種類や情報収集の方法等々、一体何が「規制の対象となるべき機能阻害」となるのか、そのいずれも法律自身では規定せず、すべて内閣総理大臣や政令に委ねるというものである。
即ち、極めて広汎な対象地から指定される「注視区域」で行うとされる調査内容も、何ら限定がないまま政令に委ねられており、調査対象となる者も土地等の「利用者その他の関係者」という曖昧で広汎な範囲に及ぶ。
これらの調査では、関係行政機関や地方公共団体だけではなく、利用者や関係者自身にも情報提供義務が課されており、たとえ自分自身への調査であっても刑事罰をもって報告が強制される。
従って、これでは対象となった土地等の利用者やその関係者のプライバシー権や思想・良心の自由が侵害される虞が極めて大かつ危険と言わざるをえない。
要するに、土地利用規制法は法律による行政の原理や罪刑法定主義に違反し、憲法で保障された思想・良心の自由、プライバシー権、表現の自由等々の重要な基本的人権を侵害し、あるいは身体の自由と逮捕抑留の要件を要求する国際人権規約第9条に違反し、その運用によっては国民弾圧法になりかねない、まさに「危険な」法律なのである。
ところで、先に政府は7月26日から約一ヶ月間基本方針に関するパブリックコメントを募集したが、これには他に類を見ない2,760件もの多数の意見が寄せられたという。
しかもその大半は、同法の廃止を求めるもののほか、前述した刑罰対象が曖昧で罪刑法定主義違反が解消されていないという指摘をはじめ、内閣総理大臣の恣意的な判断によって法が運用される危険性を指摘し、それらを批判するものであったという。
もちろん、我々も批判意見をこれに投じた。
しかし、政府はそれらを一切顧慮することなくいずれも原案通り決定したが、それではパブコメ募集をした意味がない。
もし、パブコメ募集が同法成立のためのアリバイ工作であったなら、パブコメ制度の信頼性そのものを失わせるだけである。
そもそも土地利用規制法は、自衛隊基地周辺の外国資本による土地取得を問題視し、その規制を求める声から立案されたということである。
しかし、これまでに土地取得などで自衛隊の運用等が阻害された事実は存在せず、政府もそれを認めている。
つまり、同法には立法事実そのものが存在せず、制定の必要性がないのである。
それにも拘わらず、同法は多くの基本的人権を侵害する虞が極めて大きく、罪刑法定主義という大原則に反している。
同法は百害あって一利なしという無用かつ危険な法律である。
我々は同法の全面施行に強く抗議し、これを即刻廃止すべきであることを重ねて主張するものである。
以上