『その妹』
シアタートラム
戦争で盲目になった兄とその兄を手助けする妹の物語です。
面白い作品でした。
但し、愉快な作品ではありません。
一言で言えば「無力感」を感じるような作品です。
ある問題に関して解決する手段はある。
が、その手段は許せ無い。
さりとてどうする事も出来ない。
自分が無力だという事を実感するしかない。
そういう気持ちがひしひしと伝わってきました。
市川亀治郎さんが盲目の兄を演じていましたが、素晴らしい演技でした。
盲目の演技もさることながら動きや間が他の方と違い、わかりやすいというか目立つというか動きの一つ一つが目が離せないものでした。
盲目の人の役なので他の方とその点で違います。
その目の代わりを手や耳や体全体でしているのではないかと思えるような演技でした。
その兄を慕い兄の手助けをする妹役を蒼井優さんが演じていました。
盲目の兄の傍ら、手伝いの苦労を感じさせず明るい姿を見せていました。
そして、芯の強さも見せていました。
主役の市川亀治郎さんが盲目の役なので場合によっては暗くなるかもしれない場の雰囲気を蒼井優さんが明るくしていたと思います。
しかし、明るいからこそ時々もらす弱音は胸に着き刺さりました。
無力感が伝わってくる作品でしたが決して重苦しいわけではありません。
素晴らしい作品です。
どうかできれば多くの人に観てもらいたいと思います。
シアタートラムで12月26日まで上演しています。