カラダだけを求めるのも、
ココロだけを求めるのも、
どちらもムリなはなしだ。
だって、どちらが欠けても
ぼくらは存在し得ないんだから。

Kenn
2003/10/20(Mon)

ぼく「ただいまー」
ボク「おかえり。随分かかったなぁ」
ぼく「ちょっと森の中で迷っちゃってね」
ボク「まあいまの状況ではあそこで迷うのは仕方ないな」
ぼく「うん。ちょっと騒がれ過ぎかも」
ボク「こういっちゃ語弊があるけど、新人に大型も中型も小型もないからな」
ぼく「Alanだってmoumoonだって、もう新人とは言えないかもしれないけど、新人の頃から素晴らしい歌を歌ってきたわけだし、見方をかえればavexにはない新しい音楽を試みてる。もちろんイチオシだったけどこんな風に派手には騒がれなかった。らしいといえばAAAなんかはらしいスタイルかもしれないしおなじくらい騒がれたけど、ぼくはそこにはいなかった。もっともいい作品がどんどん増えて、いまじゃ立派な代表選手になってるのが救いといえば救いかな?」
ボク「悩んでるんだ?」
ぼく「あまり派手にまつりあげられると、敵も増える。先入観が壁になって、伝えたいことがきちんと伝わらなくなるのが、正直いま無性に怖い」
ボク「とはいえ、動き出しちゃったんだから、いまさら後には引けないだろ?だいたい原点回帰してるんだから新しくないといわれたって当然のことなんじゃないのかい?」
ぼく「もちろん引くつもりはない。それに新しくないって言うけど、結構色々新しい試みをしてるんだ。はためにはわからないかもしれないけど、原点に回帰してるけど、まったくおなじことをしてるわけじゃない」
ボク「新しい部分も沢山あるもんな。でもさ、それはすごく微妙なところであって、パッと見そうすぐには聴き手に伝わらない部分だろ?それが伝わるまで踏ん張り続けなきゃすべてが水の泡になっちゃうんじゃないの?」
ぼく「それはそうだけど」
ボク「周りを意識し過ぎなんじゃないの?厳しい言い方かもしれないけど、それは少し自意識過剰だよ」
ぼく「関わり方も特殊だから仕方がない部分もあるけど、でも他のアーティストだっておなじように大切な存在なんだ、ぼくにとっては」
ボク「こんな場所でよくそんなホンネが言えるな」
ぼく「他のメーカーのアーティストだっておなじように大切だし、それぞれに対する敬意の念があっていまがあるんだ」
ボク「売り上げだけを求めるのも、作品力だけを求めるのも、どちらもムリな話、ってこと?」
ぼく「もちろん片方だけで存在しているアーティストがいるということも否定はしない。でもぼくは今回は両方を追求しなきゃならない、って強迫観念があるんだ。そういう意味でぼくもそんなキャッチコピー、つまりうたい文句に躍らされていたのかもしれない」
ボク「さあ、どうなんだろ?別に慰めるつもりはないけど、ぼくの接し方は、今までのどのアーティストとも変わってないと思うけどな?」
ぼく「何が違うんだろ?」
ボク「周りさ。いままでこれだ!って思った新しい才能に出会った時、自信を持って送り出したにもかかわらずしっかり売り込んでもらえなかった、って不満を感じたことはないかい?」
ぼく「そりゃ・・・あるさ」
ボク「売れるとか売れないとか、そんなこと気にもせずに必死で書いて、宣伝費も大してかけてないのに思わず売れちゃったことはないかい?」
ぼく「それも・・・ある」
ボク「ないものねだり、だよ。両方あればあるで別の問題も出てくるんだってこと。新しい経験じゃないか」
ぼく「そう・・・だね」
ボク「らしくないなぁ。色眼鏡で見られても、いいと言われるものを書くんじゃなかったのかい?」
ぼく「うん」
ボク「その信念が揺らいでる、な」
ぼく「え?」
ボク「そんなに自信がないのかい?今回に限って」
ぼく「そ、そんなことはないよ。あるに決まってるじゃんか!」
ボク「おいおい、自分にキレてくれるなよ」
ぼく「ご、ごめん」
ボク「まだ始まったばかりじゃないか。こんなところで揺らいでどーすんだよ」
ぼく「わかってるさ。でもね、周りからの見えないプレッシャーが凄いし、みんなの接しかたもなんだか妙なんだ。いろんな意味で、いろんな場所で感じてる」
ボク「ぼくはすぐそういうことに気づいちゃうからな。ま、時に考え過ぎって事も多々あるけど、ね」
ぼく「それを感じられなくなったら、書いてなんかいられないやい」
ボク「今回の仕事はぼくだけで成り立っているのかい?」
ぼく「違うよ。みんなで成り立ってる。それはこの仕事だけじゃない。いつだってそうだ」
ボク「ならいわせてもらうけど、きみはひとりじゃない、んじゃないかい?」
ぼく「そうだけど・・・なにか、違うんだ。これまでと」
ボク「それは初めからわかっていたことじゃないか。そもそも出だしからお膳立てされたものに関わってきたわけじゃない。ゼロから始めてるわけだ。それがこんな騒ぎになっちゃって少し心がビックリしてるだけだよ」
ぼく「そうかな?」
ボク「ここでぼくがひるんだら、みんなを巻き添えにすることになる。どんなにしんどくても、彼らを守る立場なんだから堂々としてなきゃ。たとえどんなにつらくても。それはみんなおなじだ」
ぼく「・・・ギリギリのところを渡っていかなきゃいけない・・・あれって、そういう意味だったのか」
ボク「ぼくだって人間だ。不安に苛まれることはある。でもそれはぼくだけに振り掛かってきていることじゃない。関わっているすべての人にいえることだ。だからみんなが気づかなければならないこと、なんだと思うよ。そんなんひとりで抱え込んだ気になってるのが甚だ見当違いだ。悪いけどボクにはそう見えるな」
ぼく「ぼくはどうすればいいんだろ?」
ボク「それを見つけたから戻ってこられたんじゃないのかい?あの森から」
ぼく「ぼくがぼくであること・・・」
ボク「そうだよ。どういう状況でも、ぼくがぼくであることには変わりないんだから。臆病風に吹かれて足元ふらつかせることなんてないんだ。自分に与えられた役目で最善を尽くす、それだけだろ」
ぼく「そっかぁ。ここでグルグル周りしてる場合じゃないんだ」
ボク「誇りと謙虚、どちらが欠けてもぼくじゃなくなる」
ぼく「うん、なんとか気を取り直して、やってみる」
ボク「そうこなくちゃ」
ぼく「ありがとうな」
ボク「どういたしまして。少しでも力になれれば、ね」