いつのまにかぼくに取り憑いて離れなくなった二文字、「曖昧」という言葉。
曖昧、あいまい、アイマイ、aimai・・・
なんとなく、気がつかないうちに縛られていた。まるで濡れた真綿で締め付けられるような、そんなジギャク的脅迫観念、曖昧。

今日街を歩いていると、キリスト教の宣伝カーが無機質なテープの説教を流しながらぼくの横を通り過ぎていった。エイエンのイノチなんて甘美な単語から、ジゴクなんてコロシ文句まで、それはそれは豪華な言葉のラインナップ、やっぱりとてもじゃないけど聖書にはかなわないや、そう思った。

でもどんなに荘厳な言葉がならべたてられていても、どうも人におしつけられるといまひとつピンと来ないんだなぁ・・・聖書やお経はちょくちょく目を通すけど、ヤツラは自分の解釈でないと自分に通用しない、ちがうかな?どうにも取れるような、曖昧な表現なんだよね、そうは思わないかい?

もともとぼくらの存在そのものが曖昧だ。カラダがなくなれば消えてしまうようにも思える。しかし、カラダが消えても誰かのイメージの中には残り続けるし、誰かの中に何かを残せばそれがいつまでも受け継がれていくことだって充分にあり得るわけだよね?そんな事を考えるから、書いているのかもしれない。まあ教典と比べちゃあまりに申し訳ないけどさ・・・

昨日、関西から東京に向かう機内のアナウンスで気温が10℃であることが告げられた。隣の人は「思ったより暖かいな」といっていたけれど、その声を聴いて南の島から経由して来たぼくは一瞬考えたんだ、10℃という気温は「暖かい」のか「寒い」のか?

南の国から飛んでくれば、もちろん「寒い」に決まってる。でも
北の国から飛んでくれば、それは「暖かい」に変わるんじゃないかな?ってね。

ちゅうぶらりんの時は、いつだってそんな境界線上を心が往来する。ほんのちょっとした誰かのヒトコトで、希望を持てたり、不安になったり・・・アイマイだろ?

思ったより「いい」結果なのか、「悪い」結果なのか?
「もう半分しかない」なのか「まだ半分残ってる」のか?

それはね、きっと自分が決めることなんだよ。それによって前向きになれたり後ろ向きになったりするけれど、要は自分にとって都合良く解釈してかまわない範疇なんだな、きっと。そこにしがみついて時間を浪費するか、それをバネにしたり励みにしたりして前を向いて進んでいくか・・・そうなんだ、結局は自分次第なんだよな。

キノモチヨウ、そうさ、きみのそれは気の持ちようでどうとでも変えることができるんだ。「人の心は思うより強くはないけれど、案ずるほど弱くもない」というぼくの言葉は、そんなところに由来する。

曖昧であるということ、それは言葉を返せば、したたかでしなやかな心の強さだということになる・・・

長くなっちゃったな、ありがと、今宵も最後まで^_^:

おやすみ

Kenn


ぼく「なぁ」
ボク「なんだい?」
ぼく「なんでこんなことにまでアタマが回るんだい?まったくいまのぼくにはここまで至れないや」
ボク「そんなの簡単な理由さ。だって飛行機降りちゃっただろ?」
ぼく「あ、そうか」
ボク「あのさ、いまのぼくには、音楽の世界しかないんじゃないの?」
ぼく「ああ、確かに」
ボク「違う世界を持つってことは発見をうながすにはうってつけの環境なんだ」
ぼく「そうかぁ」
ボク「そこがいま自分で欠けていると思う一番のものなんじゃないかな?」
ぼく「それもキノモチヨウ次第で変わるかな?」
ボク「たぶん変わると思うけど、どういうキノモチヨウをすればいいのかはボクじゃわからないよ」
ぼく「なんで?教えてくれよ!.」
ボク「だってボクはまだ飛行機乗ってるんだぜ。サン・デグジュペリみたいに飛行機で旅しながら書いてるんだ。今のきみみたいにちゃんとしたスタジオの中で書いてるのとはわけが違うんだ。そんな恵まれた環境なんて想像もつかないさ」
ぼく「そっかぁ」
ボク「ただ一つ言えるのは」
ぼく「いえるのは?」
ボク「ボクは未来のことがわからないけど、ぼくは過去のことをすべてとはいわないけど思いだせる、ってことかな?」
ぼく「南から来るのと北から来るのとじゃおなじ気温でも感じ方が違うって事か」
ボク「そうそう、そうこなくっちゃ」
ぼく「過去から現在を予想するのと、現在から過去を振り返るのではおなじ瞬間でも…ワカラナイ」
ボク「人の心は思うより強くはないけれど、案ずるほど弱くもない、our styleでそんなこと書かなかったかい?」
ぼく「書いた。でも書いたのはキミであってぼくじゃないだろ?」
ボク「わかってねーなぁ。ここでは敢えてボクとぼくの会話シリーズだからこうやって喋ってるだけで本来は自分の中で声を出さずに考えることだろ?ボクもぼくもおなじ自分なんだよ。そんな調子でこのシリーズやってたら分裂しちまうぜ」
ぼく「そりゃそうだ」
ボク「ここに書いてあることも、これまで千何百か書いてきた詩の中に書いてきたことも、みーんなおなじ一つの自分の心から出て来たもの。それは誇りに思ってくれなきゃ、うかばれねーだろが」
ぼく「かなわないと思っているのもキノモチヨウか。ここからまだ残ってるガラクタをまた拾っていけばいいんだってこと、だもんな?」
ボク「そうこなくっちゃ。ご自慢の魔法でまた宝物にしちゃってくれよ」
ぼく「そんなたいそうなことしてねーと思うんだけどな」
ボク「ボクからはそう見えてるんだってこと。たとえどんなにぼくがそう感じられなくなったとしても」
ぼく「そうか」
ボク「そう、まだもう2回くらい脱皮するぜ、変態物書き」
ぼく「変態?ずいぶんなこというじゃないか」
ボク「あ、そういう意味の変態じゃないぜ。OUTGROWで書いたようなサナギがチョウになるような」
ぼく「ああ、そういうことね」
ボク「いまきっと今のぼくの殻が窮屈になってきてむずむずし始めてるんだよ。そのうち解放されるさ。その時にどう生まれ変わるか、そのために必要な時期なんだって。これまでもそうだったろ?」
ぼく「確かに」
ボク「あの頃のボクもいまのぼくも、環境こそ大きく変わったけど追い込まれてることにかわりない、ってことさ。それがなによりおれたちのエネルギーだろ?」
ぼく「そうなのかもな」
ボク「さぁ、それじゃ今週もとりあえず2曲、いいのをあげてくだされ」
ぼく「おう、もちろん!」