#シラスフロントロー 

第49回 

一穂ミチ『ツミデミック』

最優秀批評家賞 shinpei440

平均点56点(最低20点、最高88点)。

批評コンセンサス

 

パンデミックに影響を受ける日本社会を背景に、さまざまなひとびとの「ツミ」を描いた連作。すでに作家として定評のある一穂ミチさんの文章、構成は巧みで、職人芸として卓越していた。一方で、そこで描かれる現代の日本社会には、グローバルに、そして歴史的に見て、ユニークな特徴があるように思われる。

 

例えば超越性(transcendence)の欠如。

 

地上波テレビからユーチューブまで、この30年の停滞日本をおおう縮こまって暗い人間観は、このチャンネルに集う一癖も二癖もある批評家軍団の琴線の真芯をとらえるには至らなかった。主宰者である茂木には全くコントロールできないかたちで議論が進んでいく。日本、及び国外で物議を醸したパリ五輪の挑戦的な開会式に歴代最高得点を与えた人々は、直木賞という権威をリスペクトしつつ距離をおいた。「次回作が楽しみ」と評される一穂ミチさんは現代日本の文学状況の中で闘っていらっしゃる。その営みは翻訳などのかたちで海外でも紹介されるかもしれない。文藝春秋、日本文学振興会、直木賞の選考委員の方々も闘っている。一方、シラスのこのチャンネルには、日本の風潮自体に違和感を抱き距離を置く人たちもいる。みんなそれぞれの現場で闘えばいい。正解はきっとないしあったとしてもそう簡単には見えない。

 

議論の詳細(番組アーカイブ)

https://shirasu.io/admin/t/kenmogi/c/kenmogi/p/20240626050656