イギリスで14年ぶりの政権交代が起こった。昨日、仕事が終わって、BBCラジオ4を聴きながら2時間くらい歩いて、スナク首相が、バッキンガム宮殿に向かってその場で辞任し、今度はスターマー氏がバッキンガム宮殿に行ってチャールズ国王とkiss handsという儀式をして戻ってきて、ダウニング街10番で新首相としてスピーチするまでの一部始終を聞いていた。

 

 スターマー新首相のスピーチは、実直な人柄が出ていて感動的だった。人権派の弁護士として活躍される中、ほんとうに人の役に立つためには政治をしなければと思って政界を志したのだと伝えられている。

 

 イギリスの反応を見ていて面白かったのが、スターマー首相は「退屈」だが、その印象を、必ずしも否定的にとらえてはいないことだった。考えてみれば、キャメロン首相が国民投票をしてイギリスのEU離脱が決まり、そのあとジョンソン首相が実際にBrexitを実現して、スナク首相に至るまでのイギリスの政治はめちゃくちゃだった。スターマー首相の退屈さが、かえって安心と安定をもたらすものとして評価されているのである。

 

 ずっとヨーロッパ政治のお荷物だったイギリスが、国内の政治状況で不安定さを抱えるフランスやドイツと比べても、かえって安定性の極として評価される流れになっている。

 

 日本はどうだろう。停滞は困ったものだが、なんでも改革を唱えていればいいというものでもない。退屈な安定にも価値があることを、スターマー新首相の登場を期に考えさせられる。