#シラスフロントロー

第27回 映画『アメリカン・フィクション』

最優秀批評家賞 kimihareru

平均87点(最低75点、最高100点)

批評コンセンサス

 最初からトップギアに入ったストーリー展開だった。「人は単純なものを求める」という市場原理と、アメリカの白人が求める黒人像の背後に隠れた偽善、そして「政治的正しさ」の「蟻地獄」に対してすぐれた批評性を発揮していた。フィクションと現実が交錯し、それが頂点に達して崩壊するラストまでの展開が魅力的。「エブエブ」以上のマルチバースが作品の中にあった。「ビジネス黒人」であることに飽き足らない主人公像は魅力的で、デンゼル・ワシントンとの出会いを思い出す。セクシュアリティの問題に悩むクリスの存在が重要。父親との関係における「真実」。ビーチハウスなどのプロダクションデザインも秀逸。ラストシーンで、黒人のトム・ソーヤーのような役の人と挨拶する場面が心に残る。

 

議論の詳細(番組アーカイブ)

https://shirasu.io/t/kenmogi/c/kenmogi/p/20240303054328