#シラスフロントロー

第26回 筒井康隆『カーテンコール』

最優秀批評家賞 treble3clef4

平均84点(最低65点、最高100点)

 

数々の名作を世に出してきた巨匠による掌編小説集。自身の事績に自負を持つ筒井さんだからこそできる、自己批評を含め、バリエーションと多様性に満ちたパロディー、スラップスティック、風刺、不謹慎、辛辣なアプローチ。その一方でほろりとさせられる王道の文学性を感じさせる作品も。「カーテンコール」と言われても、面白すぎるのでこれで終わりとは思えない。『コロナ追分』、『お咲の人生』、『川のほとり』、『夜は更けゆく』、『白蛇姫』など、鮮明な印象を残す作品があった。日本の古典を本歌取りした作品や、遠野物語を思い起こさせる読み味の作品も。過去の思い出と現実が表裏一体になるふしぎな世界を現出していた。これは、筒井さんにとって、ベートーベンの第9交響曲に通じる歓喜の歌なのかもしれない。そして、「塩昆布」はどこにあるのだろう?

 

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