#シラスフロントロー

第23回 ビクトル・エリセ『瞳をとじて』

最優秀批評家賞 treble3clef4

批評新人賞 shinpei440

平均91点(最低80点、最高98点)。

 

批評コンセンサス

 『ミツバチのささやき』、『エル・スール』という傑作群と同様、父と娘、母の不在というモチーフはつながっている。劇中劇というかたちで示される現実と空想の関係、老いの気配。アナの再登場やチェスの駒、悲しみの王の庭のヤヌス像などを通して、過去と未来をつなぐ視点が提示される。フランコ政権下の緊張の下につくられた傑作と比較して、今作は介護施設やデジタル化、テレビ番組などの現代的文脈が立ち上がる。瞳をとじてこそ、真実の姿が見えてくる。この作品に100点に及ばない点があるとするならば、それは、まるで無意識の彫像のように精緻に組み立てられた作品世界を視聴者が不可思議なパズルと感じ、完全には理解できないからあり、作品が受容されて了解された時点で、評価は「満点」になるのだろう。人生の時間は流れる。瞳をとじた瞬間、無音の中で人格は取り戻される。音楽的な映像をもう一度見たいと強く思うのは、これが、巨匠のラストメッセージだとも感じられるからだろうか。

 

議論の詳細(番組アーカイブ)

https://shirasu.io/t/kenmogi/c/kenmogi/p/20240211182347