IAIの動画で、Sabine Hossenfelder, Roger Penrose, Michio Kakuのマルチバースについての討論を見た(というか歩きながら聞いた)けど、面白かった。ペンローズとホッセンフェルダーが反対、カクが賛成の立場だった。

 

 

 

 

ホッセンフェルダーが、マルチバースや超ひも理論は、数学を実在と混同している点が問題なのだと言った。それに対してカクはいろいろ言っていたが、今回に関して言えばペンローズ、ホッセンフェルダーの方に分があるように聞こえた。
 

カクは偉大な物理学者だけれども、話をするときに必要以上に角度をつけたり、盛ったり、サービス精神でエンタメにしてしまうことが、かえってその主張の信憑性を下げているのがもったいないと思う。いずれにせよ、マルチバースについての猛獣たちの戦いは面白いので一見の価値ありです。

 

マルチバースについては、Extreme ScienceでUCバークレーの野村泰紀さん

@YasuNomu1

とお話したときに持ったインサイトがぼくにとっては最大の論点のように思う。つまりは、素粒子の質量や相互作用の強度などのパラメータの設定についての議論である。

 

 

 

 

素粒子の質量や、相互作用の強度などのパラメータが、なぜこの特定の値をとっているのかの説明に、マルチバースは実はありとあらゆるパラメータの宇宙が存在して(その論理は超ひも理論からくる)、たまたまこのパラメータの宇宙に我々が住んでいるだけだとする。

 

ありとあらゆる可能宇宙のうち、この特定のパラメータの宇宙に我々がたまたま住んでいるんだという議論は、ワインバーグによる「人間原理」の精緻な展開だが、パラメータの起源問題についての一つの回答だと思う。ただ、今回のIAIの議論もそうだが、この点が十分に論じられていないように思う。

 

追記。人間の世はいろいろだけど、こういう浮世離れした話はいいねえ。