先日、乃木坂から赤坂に抜ける道の、ジャニーズ事務所が元々あったところの前を通ったら、通り沿いにはられている大きなポスターの前で、二人の女の方が交互に写真撮影していた。

 

 どんなグループの誰なのかは、撮影の邪魔にならないように素早く通り過ぎたのでわからなかったけれども(あるいは写真を見てもわからなかったかもしれないけれども)、きっと人気の人たちなのだろう。

 

 ジャニーズのファンの方々は、どんな気持ちで推していらっしゃるのか。アイドルの文化自体を否定はしないけれども、ぼくにはすんなりとは入ってこない。

 

 ぼくは、男性でも女性でも、いわゆるアイドルの人たちではなく、ごく普通に社会に生きている、等身大の人たちの方が素敵だといつも思っている。

 

 ジャニーズのアイドルたちよりも、それを推している一人ひとりの方が、よほど素敵だ。

 

 余計なお世話だと思われるかもしれないけれども、そう思う。

 

 アイドルというのは、所詮虚像で、それをエンタメで楽しむということはある程度あってもいいかもしれないけど、日本は行き過ぎている気がする。ジャニー喜多川さんのことだけじゃなくて、いろいろ無理が来ているんじゃないか。

 

 そもそも、かわいいとか、かっこいいとか、そういう人の外見のことをあれこれ言うのやめようよ、という世の中の流れがある。

 もちろん、主観的にかわいいとか、主観的にかっこいいというのはいいけれども、それは、社会の中で、それぞれの関係性において培われるもので、ステージでスポットを浴びた虚像のアイドルについて言われることではない。

 

 もっと、一人ひとりの個性を、ごく自然にリスペクトして、行き交える世の中になればいい。

 

 そうすれば、社会のあちらこちらで、誰かが誰かのアイドルになることはあっても、幻想の消費の対象としてのいわゆる「アイドル」は消えるだろう。そして、ほんものの歌や踊りだけが残るだろう。

 

 ジャニーズ事務所のあった場所で、道路沿いの大きなポスターの前で記念撮影をしている方々の横を通り過ぎた後、赤坂の方に歩きながら私が考えたのはおよそそのようなことだった。