バービーとオッペンハイマーのイメージを混ぜたファンアートがネット上にあるのはしばらく前から見ていたけど、趣味が悪いなあ、どこの文化圏にもうかつなやつらはいるなあ、とくらいしか思わなかった。全く別の作品で、バービーはレビューを見ているととても評判がいい。

 

オッペンハイマーは、原爆開発のマンハッタン計画を描いた映画だが、なんとも言えない重苦しい気持ちになるらしい。こちらも、脳天気なファンアートとは全く別個で、作品自体の本質とインターネット上のミームは関係ない。

 

バービーの監督はGreta Gerwigで、バービーとオッペンハイマーを結びつけて軽薄なミームをつくっているネット民とは作品内容が全く関係ない。むしろ、ジェンダーとか、多様性とか、母と娘の関係とか、子どもとおもちゃの関係などに全方位配慮した秀作と聞いている。

 

まとめれば、今回の騒ぎは、英語圏の一部のネットユーザーの軽薄なミーム(もちろんその背後には一部のアメリカ社会の軽薄さがあるという見方もできる)に、バービーの公式PRの中の人の軽薄さが乗ったというだけで、バービー、オッペンハイマー、どちらの作品の本質とも関係がないと思う。

 

映画好きとしては、どの国、どの文化圏にもいる軽薄なひとたちの空騒ぎに関係なく、バービー、オッペンハイマーという、作品性は違うもののどちらもすぐれた制作者による傑作を大いに味わいたいと思う。ネットのミームに載せられて空騒ぎすることそれ自体が軽薄な態度だと私には思われる。