歌舞伎座で、市川中車さんが座頭をつとめる昼の部、「菊宴月白浪」を見てきた。いろいろ大変なことがある「澤瀉屋」だけれども、今は、みんなが力を合わせて、中車さんを中心として盛り上げていこうという気持ちが伝わる素晴らしい舞台だった。

 

 

 

 

「菊宴月白浪」は、鶴屋南北作を先代の市川猿之助さん(猿翁さん)が163年ぶりに復活上演した(昭和59年)戯曲で、それ以来今度は32年ぶりの上演。劇場の両側をつかった宙乗りや、花火など、見どころ満載のスペクタクルである。

 

「澤瀉屋」が危機にあることは間違いない。その中で、「中車」の「中」を描いたり、凧揚げのシーンでジェンダーのことに触れたり、花火に最新のテクノロジーをつかったりと、「菊宴月白浪」は、現代的にアップデートされた古典精神あふれる舞台となった。

 

歌舞伎は、イノベーションの気質に満ちている。廻り舞台や、宙乗り、早変わり、本水、だんまり(今で言えばスローモーション)など、すべて江戸時代に行われている。だから、どんなに思い切った演出をしても、それは歌舞伎にとっては本寸法である。今月の「菊宴月白浪」が証明しているように。

 

もちろん、揺れる澤瀉屋について、いろいろな思いを抱く人がいるのは事実である。幕間などに、客席から、「市川猿之助」「香川照之」「たいへんねえ」などという会話が聞こえてきた。そのような波乱の中、「菊宴月白浪」には、歌舞伎の本道を澤瀉屋で盛り上げていこうという情熱が感じられた。

 

舞台がはねて、歌舞伎座から歩きながら、感想を話しました。 「菊宴月白浪」は、幾多の困難を乗り越えて、市川中車さんが「澤瀉屋」の真ん中で奮闘する素晴らしい舞台となっています。ぜひみなさん歌舞伎座に足を運んでください!!