昨日の東京オリンピックの閉会式で、日本国旗が入ってくるときの音楽が、小津安二郎の『秋刀魚の味』だ! ととっさに思ってしまった。


 それでそうツイートもしたんだけど、よく考えてみたら、『東京物語』だった。それで、訂正ツイートをして、改めてツイートし直した。


 『秋刀魚の味』も『東京物語』も100回以上ずつ見ているけれども、なんであの場面でまず勘違いしてしまったのかと言えば、まずは「色味」だと思う。

 『東京物語』はモノクロ作品で、昨日のあの落ち着いた色調は、小津の最後の作品でカラーが目に染みて美しい『秋刀魚の味』に通じた。


 また、もうこれでオリンピックも終わりだ、という寂しい気持ちが、一足先に来た秋のようで、いかにも『秋刀魚の味』にぴったりだった。


 でもよく考えてみると、東京オリンピックなんだから、『東京物語』なのに決まっている。それに『東京物語』は海外の映画人の投票で何度も世界の映画史上ベストワンに輝いたことのある名作中の名作だが、『秋刀魚の味』は名作にしてもよりマニアックだ。


 いずれにせよ、昨日の閉会式の国旗入場の際に小津の映画の音楽が流れたのは、私にとって忘れられない経験となった。


(クオリア日記)