先日、「ドリームハート」の収録のためにTokyo FMに行ったとき、とっても嬉しく、感激することがあった。


 私の2つ隣のスタジオが、なんだかとても華やかな雰囲気だなあと思いながら通り過ぎてスタジオ入りした。


 それから、一生懸命収録した。


 ゲストが帰られたタイミングで、Tokyo FMの増山麗央さんがふらりとスタジオにいらして、「村上春樹さんが収録されているのですよ」と言われた。

 

 ええええっ!!!


 む、村上春樹さんがっ!


 そう言えば、エレベーターで上がるときに、坂本美雨さんとご一緒にスペシャルの番組があるというポスターがあって、それをiPhoneで撮っていたのだった。


 ひええ!(笑)


 動揺を抑えつつ、ゲストが帰られた後で収録する感想とまとめ、さらに番組告知などを冷静沈着に(笑)収録し終えたタイミングで、増山麗央さんに加えて、Tokyo FMの重鎮、延江浩さんもいらした。


 そして、お二人が、な、なんと、ちょっとスタジオに来てもいい、とか言っている!(笑)


 動揺してスタジオの前にいくと、ガラスの向こうに村上春樹さんと思われる方が(なにしろ生村上春樹は初めてだったので)立っていらした。


 マイクの載ったデスクの上には、放送で使うのだろうか、本やLPなどの資料がたくさんつまれている。

 その前で村上さんが春のタンポポみたいにいい感じでたたずまれている。


 わっわっ、と立っていると、スタジオに入った増山さんが「脳科学者の茂木健一郎さんが・・・」みたいに村上さんに説明していらして、やがて手招きをするじゃないか(ドキッ)。


 どうも、スタジオに入っていい、という意味みたいだから、ぼくがドキドキしながら入っていったら、村上さんがそこにいらした。


 ニコニコ笑っていて、とってもいい感じだった。


 それで、ぼくも、お忙しいだろうから、だけどせっかくだからなにか実質的なことを言わなくちゃ、と思って、「あ、あの、村上さんが一番最近に書かれた短編集の、最後のやつがとっても良かったです! バーのカウンターにいて、女の人が来て、鋭いことを言うやつ」となんだか「あのそのどの」言葉しかないことを言ってしまった。


 実際には、『一人称単数』の中の最後にあった書き下ろしの表題作(『一人称単数』)のことを言いたかったんだけど、とっさのことで動揺して指示表現しか出なかったのだ。


 そうしたら、村上春樹さんが笑われて、「ありがとう。でも、ああいう目には会いたくないけどね」とおっしゃった。


 ドキッ!


 なんだか、村上さんの小説に出てくる登場人物の発言のようだ。


 『一人称単数』は、主人公の男性が自分のあり方の致命的な欠点のようなものを女性に指摘されるという存在の根幹を貫かれるような震撼すべき文学性に満ちた傑作なのだけれども、それを「ああいう目には会いたくないけどね」と言われる村上さんは素敵だと思った。

 

 その他にも二言三言ことばを交わして、「失礼します!」と言ったら、増山さんが笑って、「写真撮りましょうか」と言われる。


 えっ、わっと思いつつ、ニコニコしている村上さんの方に近づいていったら、増山さんがご自身のiPhoneで撮影してくださった。


 それを、後に送ってくださった。


 ぼくと村上春樹さんの、3枚の写真。


 SNSはダメですよ、と増山さんに言われたけれども、もちろん最初から出すつもりはないです!


 その翌日、USBメモリに移して、近くのコンビニまで走って、写真にプリントしてきた。


 村上春樹さんとの3枚の写真は、何かのお守りのように、今、ぼくのパソコンの横にある。


 今、振り返ると、あの時、村上さんと話したときの人柄というか、その感触がとっても魅力的だったなあ、と感じる。やわらかく、温かいのだけれども、芯がしっかりしていて、骨太の、確かにそこに生きているという雰囲気。


 村上さんは、本当にこの世に存在したのだなあ、と思った。


 ミュウツーのように、まず見ることができない、レアポケモンのように感じていた。


 お話する貴重な機会をいただいた、増山麗央さん、延江浩さん、そして村上春樹さんご本人に感謝いたします。

 

 みなさま、良いお年を!


 村上さんのTokyo FMの特別番組『村上RADIO 年越しスペシャル~牛坂21~』は、大晦日、午後11時から、翌1月1日の午前1時まで。


 初の生放送で、ぼくがお邪魔したときはランスルーという進行の確認をしていたとのこと。


 楽しみです!


 下は、ぼくがiPhoneで撮った番組ポスターの写真です。


(クオリア日記)


村上ラジオ大晦日スペシャル.JPG