某公共放送の中の会議室。


「最近、わが局の若者の接触率が減っている。BBCと比べて批評的にも評価されていない。もっとも日本にはそもそも批評がないのだが・・・なにか画期的な番組企画はないか。」


「どんなものでもいいのですか」


「ああ、いい。」


「どんなに大胆なものでも?」


「ああ、いいよ。この際、思い切って、わが局の放送文化を変えたい。」


「それじゃあ・・・大胆に考えるか。」


「そうだね、わが局に就職した若手女性芸人が辞めようと思わないで済むような魅力的な番組提案をな・・・」


「・・・局長、できました!」


「おっ、言ってみろ!」


「はい、突撃、トキオくんというのはどうでしょう?」


「なんかどこかで聞いたことがあるタイトルだな。どんなものなんだ?」


「はい、世の中で時間がいかに無駄になっているかを検証するのです。」


「例えば?」


「国会の審議で、指名される度に、わざわざ席を立って歩いていく、あの時間が年間でどれくらいになるのかを検証してみたらどうでしょう。」


「そんなのが、放送できるか!」


「はい、わかりました!」


「おっ、言ってみろ!」


「あの人もザイニチというのはどうでしょう。」


「それはなんだ?」


「戦後の大スターたちのうちに、実は在日韓国人の方だったひとが多くいて、いかに日本社会の差別意識の中で日本風の名前で活躍してきたかをドキュメントするのです」


「そんなのが、放送できるか!」


「その人物像に迫るとともに、日本人の時代遅れな差別意識を浮き彫りにするすばらしい番組なのですが。」


「そんなのが、放送できるか!」


「あっ、わかりました!」


「おっ、いいな!」


「これであなたもフリーパス、というのはどうでしょう?」


「おっ、どんな番組だ?」


「在日米軍の方に密着するのです。」


「ほお、いいかもしれない。」


「日米地位協定で、アメリカ軍の軍人が、パスポートも何もなしで、入国審査もなしで、日本に自由に出入りできることを密着レポートするのです。あっ、これはラッキー、みたいな感じで。」


「そんなのが、放送できるか!」


「『YOUは何気に日本へ』みたいなタイトルで。」


「そんなのが、放送できるか!」


「ついでに、かつて日本のディズニーランドに行こうとして捕まっちゃった某隣国のVIPも、もし在日米軍の軍人さんだったらだいじょうぶでした、みたいなボーナスビデオもつけて。」


「そんなのが、放送できるか!」


「あっ、わかりました!」


「おっ、良さそうだな! どういうやつだ?」


「はい、下剋上東大王というのです。」


「どういうのだ?」


「はい、東大生は偉い、賢いという前提でつくられている某民放の番組に対抗して、下剋上のクイズ大会をするのです。」


「ほう。」


「東大生とFランク大学の学生がクイズで対戦して、実はFランク大学の学生の方がすぐれた能力を持っている分野もあるということを視聴者に見せつけるのです。」


「それは放送できるかもしれない。」


「えっ?!」


「それは、放送できるかもしれない。さっそく制作にかかってくれ!」


某公共放送のスタッフはさっそく制作にかかった。そして、リサーチの過程で、全く似たようなフォーマットの番組、ガチでケンブリッジ、オックスフォードなどの大学と普通の大学生がぶつかって、下剋上でオックスブリッジがやられる番組、University ChallengeがBBCではとっくの昔に放送されていることを知るのだった。


「どんだけ遅れているんじゃい、わがNHKは!」


そして、局長は今日も、大手芸能事務所のタレントを順列組み合わせで出演させる民放模倣番組で、視聴率という幻を追うハンターという役割を引き受けるのだった。


しかし、その局長の足元はすっかりふらついている・・・果たして、これからも某公共放送NHKは、人々に受信料を払わせることを納得させられるのだろうか。


(もぎけんのデイリーショー)

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