1331回



YF さん


茂木先生、こんにちは。

ASD(Autism Spectrum Disorder)の聴覚過敏についてご相談させてください。

多くのASD児が聴覚過敏の症状を持つことはある程度知られていると思います。特に赤ちゃんや子供の大きな声(泣き声)を苦手としているASD児は多いと聞きます。

中学生の子供がいるのですが、このような症状に長年悩まされてきました。泣き声を聞くとスイッチが入るようで他のことを全て忘れて集中してしまうように見えます。そうなるとイヤーマフや耳栓も受け付けなくなりコントロールが効かず、泣き声が大きくなればなるほど衝動的になり、つかんだりたたいたりすることもありました。(もしかしたら聴覚過敏の域に収まらないことかもしれませんが。)

子供が成長するにつれ不安が募りまして、感覚を和らげることができないかと漢方を始めました。本人もyoutubeで赤ちゃんの泣き声を繰り返し聞いたりしています(わたくしには自分なりにシミュレーションして泣き声に慣れるよう頑張っているように見えます)。

最近は多少改善したような印象でしたが、数日前に泣いている子を叩いたと報告がありました。突然の大きな泣き声にまた我を忘れて反応してしまったのだと思います。本人もとても落ち込んでいます。

昨年、某ファーストフード店で騒ぐ子を男性が蹴ったというニュースがありましたが、それを聞いた時もまったく他人事とは思えず大きな不安が湧き上がってきました。

小さな子供はいつどこで泣き始めるかわかりませんし、親も常に監視しているわけにはいきません。このような困難な感覚もしくは衝動をなんとか克服できないものかと様々な医療機関や療育機関を訪ねてきましたが今のところ有効な対策と出会うことはできていません。

このような症状に対して、改善の可能性があると思われるもの(例えばトレーニングやサプリメント等)はこの世の中にあるものでしょうか?もしくは、このような課題に取り組み良い結果を出している組織(国外でも)をもしご存知でしたらぜひご教授いただけないでしょうか。

先生はTEDでもスピーチされていますし、国内外の最新動向を把握されているのは国内では茂木先生しかいらっしゃらないのではないかと思いこの度質問させていただきました。

どうぞ宜しくお願いいたします。

千葉県在住
フォーチュン


ご回答。


個性は大切ですが、他の方との共存の方法も考えないといけないですよね。。。


やはり、広い意味での教養、経験、知識、スキルを身につけることしかないと思います。


そのために、さまざまなことを学んでいくことが大切かと思います。


たとえば小説を読んで、人間の心のあやを理解したり、映画を見て、人とひととのすれちがい、共鳴のダイナミクスを学んだり。


診断は統計的な傾向の把握にすぎず、ひとりひとりが違います。その個性を生かして他人との共存をはかるためには、感情や記憶、運動を統合して有機的に制御していく、前頭葉を中心とする回路の働きが必須です。それは結局総合的な人格を育む経験や学びを通して高めていくしかないのです。

nounandemo
 
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