昔、ケンブリッジに留学していたとき、カミュの『ペスト』を現地の古本屋で買って(英語訳で)読んだんだけど、最近の時勢の中で、なんとはなしに気になって、もう一度読み直してみようかなあ、などと思っている。


 ほとんど細部は忘れてしまったんだけど、とにかく理由もなく人が病気になって倒れていって、それが不条理として襲ってきて、最後に、何事もなかったかのように突然病気の流行が終わる、という一連のクオリアだけが心の中に残っている。


 人の記憶というのはふしぎで、長い間ほとんど忘れていて、こうやって何かのきっかけでよみがえることがあるんだなあと思う。


(クオリア日記)