連続ツイート2421回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。


ここ数年の日本の「保守化」は、認知科学的に言うと、東日本大震災や日本の経済の長期低迷によって、いわゆるmortality salienceで説明できる。同時多発テロの後にアメリカが保守化してブッシュさんが再選されたのと同じ構造である。人は不安になると、大きな物語に寄り添いたくなるものだ。


グローバル化の中、世界が均質になってしまう動きの中で、日本の固有の価値に目を向けるということは人間の心理として当然だし、意味のあることでもある。私自身、そのような作業はしているし、(ikigaiという英語の本も書いた)、もののあはれや、金継ぎなど、日本のユニークな思想を見直すことは必要


しかし、そろそろ、保守化とか、日本はすごいとか、そういうことだけではやっていけないフェーズに日本は来ているように思う。日本の固有の価値はこうだというのは、確かに大切ではあるが、一つの「ファンタジー」でもある。ファンタジーだけでは暮らしていけない。現実の経済、足元を見る必要がある。


政治に必要とされているのは、もはや「ファンタジー」ではなく、「リアリズム」、実務的な実行力だと思う。少子化、高齢化が進み、経済が停滞する日本を、どのように立て直すか。日本すごいとか、クールジャパンだとか、そういうファンタジーじゃなくて、リアルな手触りのある政治の言葉が聞きたい。


ここ数年の保守化や日本すごいのファンタジーの波にうまく連動されてきたのが安倍さんだと思うが、安倍さんが支持されてきたのは実はファンタジーの部分ではなくアベノミクスなどの経済政策(及びそれが人々に与える期待、ないしは幻想)の部分だと思う。安倍さんがそれに気づいて軌道修正できるか。


憲法改正は、大切な人にとっては大切なんだろうけれども、自衛隊の地位を含め、現行憲法でももう手当は済んでいるから、どちらかと言えばファンタジーの領域に属する。安倍さんが憲法改正にこだわると、ファンタジーからリアリズムへの政治の流れを読み損なって、支持を失うのではないかと思う。


日本すごいとか、対韓国でイキるとか、そういうファンタジーから解放されてリアリズムで国内を見ると、政治的にやるべきことはたくさんある。安倍さんが軌道修正してそれをやってくださるか、次の方がそのようなリアリズムの政治をしてくださることを望む。もちろん野党が政権交代でそれをやってもいい


震災という悲劇と、グローバル化の不安に対して日本スゴイのファンタジーを消費してきたのが過去数年の政治だとすると、そろそろ潮目が変わっていて、たとえばケン・ローチ監督の映画のような、徹底したリアリズムの視線に基づく、実務的な「動詞」の政治の季節が日本に訪れることを心から望みます。


以上、連続ツイート2421回、「日本の政治はファンタジーからリアリズムへ」をテーマに、8つのツイートをお届けしました。

連続ツイートまとめ.png