脳は、全く予想していないことを聞くと、一瞬空白になる。


新千歳空港にJTB総合研究所の山崎誠さんと向かっているときに、いろいろ雑談をしていて、旅行やホテルについて私が知らないことを山崎さんに教えていただいていた。


空港もだいぶ近づいたとき、山崎さんのフライトがちょっと後なので、それまで何をしているのか、という話になり、いやあ、空港でいろいろやることがありますよ、と山崎さんが言われた。


「温泉に入ってもいいですし。」


「ん? 今、なんて言われました?」


「いやあ、新千歳空港の中にある、温泉に入ってもいいですし。」


「えっ、温泉があるんですか?」


私は思わず声が上ずってしまった。


今まで何十回と新千歳空港を使ってきたが、温泉があるなどという話は聞いたことがない。


「ありますよ」と山崎さんは涼しい顔で言った。


山崎さんが言うんだから、きっと本当なんだろうけれども、そんなにすぐには信じられない。


しかも、露天風呂もあるという。


「ほら、あの建物のところに、見えるでしょ。あそこがそうですよ。」


自動車がいよいよターミナルに近づいたとき、山崎さんが指差してそう言った。


確かに、それらしいものが見える。


空港ターミナルに到着し、スタスタと前を歩く山崎さんについていった。


いつもの、広くて斜めにエスカレーターが上がっているところを通り、みそラーメンを食べるところを抜け、エスカレーターを二度くらい上がると、確かにあった!


新千歳空港に温泉があった!


「それじゃあ!」


山崎さんは、さっそうと去っていった。


10分後、私はふしぎな気持ちで露天風呂につかっていた。


夕暮れの空が見える。


本当に、温泉があった!


ああ、極楽だなあ。


(クオリア日記)


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