連続ツイート2302回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は、感想です。


ある人物について、不利な情報や虚偽の言説を流布させて、その人の評価を低下させることを「人格破壊」(character assassination)と呼ぶ。米大統領選で、オバマ大統領が米国生まれではないということをトランプさんが主張した事例などが典型的である。(日本語訳としてここでは「人格破壊」を採用)


人格破壊が起こると、その人は本当は幅広い人なのに、ある一部分のイメージだけが拡大して、社会がその評価で動いてしまう状況が生じる。例えば、さまざまな良いこともした田中角栄さんが、ロッキード事件で「闇将軍」といったイメージができてしまったのが典型である。


近年でも、人格破壊は引き続き起こっている。例えば、鳩山由紀夫さんに対する「お花畑」「宇宙人」というイメージや、小沢一郎さんに対する豪腕やダーティーというイメージ、山本太郎さんが国会で焼香したり、陛下に手紙を渡したというイメージが特に強調され反対派に使われるといった事例である。


人格破壊は、世界のどこでも起こる事象であるが、日本の場合問題なのは、character assassinationという概念自体があまり社会の中で共有されていないことである。そのため、人格破壊を仕掛ける側は、受け止める側がこのメカニズムについてナイーブであることを前提にオペレーションができる。


日本のメディアが、一般的に批判的ジャーナリズムの思考が弱いこと、情報を受け取る側に、それを懐疑的に見て検証するリテラシーが低いことから、日本は、人格破壊がやりやすくまたその影響が固定化しやすい国であると考えられる。だからこそ、人格破壊という現象にもっとメタ認知を向ける必要がある。


映画『新聞記者』でも、人格破壊が大きなテーマの一つとなっていた。結局、人格破壊が成功するのは、メディアの報道に批判的ジャーナリズムの精神が不足していて、受け取る側も懐疑的リテラシーがない、つまりは素直でナイーブ過ぎるからで、日本社会全体の特性である。


人格破壊は現代に始まったことではない。プラトン『ソクラテスの弁明』に至る、古代アテナイにおけるソクラテスの苦境は、本人の実像と関係のない「若者をたぶらかせる」「異端の神を信じる」といった人格破壊の結果であった。オスカー・ワイルドも人格破壊の結果として苦境に立たされた。


人格破壊(character assassination)という事象が存在すること、そしてそれが現在進行形で私たちの社会に影響を与えて揺るがしていることに、もっと自覚的であって良いと思う。それは日本社会にとっての一つの認知的課題だと言えるだろう。


以上、連続ツイート2302回、「人格破壊(character assassination)について」をテーマに、8つのツイートをお届けしました。

連続ツイートまとめ.png