「カレンダー計算」という、何年何月何日というと、瞬時にその「曜日」を言い当てられる特殊な能力を持った方々がいる。
認知科学や脳科学で注目されているところであるが、昨日、大変おもしろい方にお目にかかった。
その方は、「元号計算」ができるのである。
西暦で、「何年」と言うと、即座に、その時の元号が言えるのである。
私は、歴史年表を片手に、いろいろな西暦の年号を言うと、その方は即座に元号を言われた。
途中で元号が変わった年も、即座に「◯◯から◯◯に変わりました」と答えられる。
どうやら、本人も意識しないままに、無意識のアルゴリズムで答えているようなのだった。
しばらくその方をテストしているうちに、私はあることを思いついた。
そして、できるだけさりげないふりを装いながら、西暦を言って、元号を答えていただくそのやりとりを繰り返した。
「◯◯◯◯年は?」
「◯◯です」
「◯◯◯◯年は?」
「◯◯です」
「……。」
まだだ、まだだ、もう少し。
私は、慎重にタイミングを図りながら、「その時」をうかがっていた。
ついに、「その時」が来た。
私は、胸の動悸を抑えながら、さりげなく聞いた。
「では、2020年は?」
その方の表情が、一瞬、ぴくっと動いたようにも見えた。
しかし、それも私の気のせいだったのかもしれない。
その方は、よどみなく、「◯◯です」と元号を答えられた。
その元号は、私の脳裏に鮮明に刻まれているけれども、それをここに記すことはできない。
これを書いているのは2019年4月1日7時10分。新元号の発表まではまだ4時間ある。
今、この時点で、新元号を書いてしまうことは影響が大きすぎるので、書くことはできない。
私が現時点で言えることは、カレンダー計算や元号計算のようなアルゴリズムを成立させる脳内計算機構のふしぎさ、素晴らしさである。
人工知能は過去に縛られているが、人間の脳は未来へも橋渡しができるのである。
「元号計算」がそれを証明している。
(クオリア日記)