茨城県北芸術祭が中止になるかもしれないというニュースに接して、驚いている。


効果などを考えて、かわりにパンダを動物園につれてきたら、というような検討が行われているとのこと。


越後妻有や、瀬戸内など、芸術祭は実際にその地域を広く深く変えていく力があると思う。


地域的に分散した、さまざまな場所に作品が置かれたり、作品がつくられたり、それを見にくる方々が「回遊」することで、次第に人の流れができて深いところで地域が変わっていくという効果がある。


アートの効果は、中長期的にじわじわ利いてくる。

なによりも、地域の方々の心の中にしみ通っていく。

金沢に21世紀美術館ができた直後、タクシーの運転手さんに、「あそこに行っても、印象派の絵とか、そういう作品はないらしいんです」と言われたことがある。


現代アートがなにかわからない、という正直なご感想だったのだと思う。


今や、21世紀美術館は子どもたちもそこで目を輝かせ、すっかり地域にとけこみ、人々の誇りになっている。


アートというものはそんなふうにゆっくり静かに心を変えていくものなのだと思う。


パンダが来たら、それはそれで子どもたちがよろこぶ。


むしろ、アートパンダの、素敵な茨城県を見てみたいなあと思う。

(クオリア時評)


アートもパンダも.png