NHK『おはよう日本』の中で放送された「“叱られ方”を学べ!」に強い違和感を抱いたのは、そこで前提にされている人間関係があまりにも一方的だったからだ。


https://www3.nhk.or.jp/news/contents/ohabiz/2019_0219.html


最初から、会社の上司、先輩社員はより賢く、見識も高いと前提にされていて、それに対して学生(これから新入社員になる人たち)はより未熟で、知識や経験もないと決めつけられている。


確かに、その会社の業務に関していえばそうかもしれないが、インターネットやITなどについては、後からの世代の方が感覚的にすぐれていることも多い。


私の経験では、むしろ、自分よりも若い世代に取材したり、教えてもらったりすることも多いし、その方がお互いに有意義なことが多い。


あの番組のクリップを見て強烈に古いと思ったのは、つまり、より賢い年長者、未熟な若者というステレオタイプを前提に制作されているということで、悪い意味での「おじさん」臭がした。


より深刻な問題は、NHKのニュース、報道、番組制作全体が、その前提になっている価値観、世界観が「古い」ままだということだ。


時代は急速に変化しており、人間関係の考え方や、価値観も変わってきている。


それなのに、「みなさまのNHK」は相変わらずのものの見方で番組をつくっているように見える。


だから、ものがわかっている人は、もう番組を見ない。


番組制作のナラティブが決定的に古いのだ。


もちろん、良い番組もある。

例えば、「チコちゃんに叱られる!」は、五歳児の女の子が大人を叱るという設定自体に批評性がある。


ところが、上の報道には、そのような批評性が一切なかった。


これからの社会は、年齢が関係のないエイジレスになり、人間関係はジェンダーや年齢が関係のない対称性が鍵となる。


そのようなことが制作現場に感覚的に浸透していないから、まるで悪い意味での「昭和」がタイムカプセルで画面の中に閉じ込められているような、そんな番組だらけになってしまうのだ。


(クオリア時評)


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