いつも公言しているように日本のテレビは現状ではほとんど見ないが(情報源としての質が低いので)、どのような放送、報道がなされているかは、注意深くキュレーションされたツイッターのリストなどで知ることができる。

 それで、テレビの報道のされ方については、本当に不思議だと思う。

 たとえば、クイーンのブライアン・メイさんが辺野古埋め立てに反対する署名を呼びかけたこと、普通に考えてニュースバリューがあると思う。 
 映画『ボヘミアン・ラプソディー』が大ヒット中だし。
 でも、私がフォローしているツイッターのリストによると、報道ステーションでもとりあげなかったという(もし取り上げていたのだったらご指摘ください)。

 あるいは、NHKの討論番組で、安倍首相が、辺野古の埋め立てに先立ってサンゴを移植したと発言されたことだって、ニュースバリューがあると思う。

 特に後者は、NHKとしては自局の番組でのご発言だから、ファクトチェックを含めて報じるのが普通だろう。(いつも引き合いに出して申し訳ないが、BBCだったら間違いなくやっている)
 でも、取り上げた形跡がない(ツイッター上で)。もし取り上げていたらご指摘ください。

 それで、なぜ日本のテレビの報道はこんな体たらく(最低の意味で)なのだろうと考えていて、ああ、そうか、と思ったことがあった。

 日本のテレビの報道は、ウェットすぎるのである。

 (いつも引き合いに出して申し訳ないが)BBCだったら、たとえばこんなふうに報じる。

 「ロックグループ、クイーンのブライアン・メイさんが、辺野古の埋め立てに反対する署名をツイッターで呼びかけました。大きな反響を呼び、署名数が増えています。一方、政府は特に反応をしていません。メイさんは沖縄の事情をどれくらい知っているのか、という反論も上がっています。」

 「安倍首相が、NHKの討論番組で、辺野古埋め立てに先立ってサンゴの移植をしたなどと発言したことに対して、そのような事実はないのではないかと反論があがっています。この点について、政府は今のところ見解を示していません。沖縄県は、◯◯という声明を発表しました。辺野古では、埋め立ての作業が毎日続いています。」

 つまり、事実を報じることは特定の立場(ブライアン・メイさんの署名呼びかけに賛成することや、安倍さんの発言を非難すること)を支持することを意味するわけではなくて、ただ、ニュースバリューのある事象を伝えているに過ぎないのである。

 一方、日本の報道番組は、不必要にウェットで、キャスターやコメンテーターが特定の立場から感情を盛ったり、街の声を拾って「怒り」や「反発」を伝えたりと、とにかく感情的にすぎるのだと思う。

 新聞報道も同じで、よく社会面で「街の怒りの声」「悲しみの声」などと伝えているが、そういうことをすることは必ずしも要らないので、ただ、単に、事象を多方面から伝えればいい。

 本当はNHKは客観的で冷静で緻密な報道を真っ先にできるしできなければいけない局なのに、この「感情ウェットの罠」に陥っている印象がある。

(クオリア時評)


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