落合陽一さんがWeekly Ochiaiで話していることが意味不明だ、という記事があって、池上高志さんのツイートでそれを知って読んでみた。

【サバの話だったの?】WEEKLY OCHIAIというコント、あるいは地獄について。


この記事を書いた堀本見さんはとても文才のある人だと思う。これから注目していきたいと思います。

それで、件の落合さんの話だけれども、おそらく理数系の素養がある人にとっては、それほど難解ではないというか、その内容が認識できる、あるいは推定できる程度のことだと思う。

堀本さんは敢えておもしろく書いていらっしゃるけれども、もし、例えば理系の大学院の院生がその場にいたら、あー、チューリング・パターンの話ねとか、それなりに補って聞いていくのだと思う。

おそらく、これは何人かが指摘していることだけれども、普段接している日本のメディアのレベル設定が低すぎるというか、過剰に親切なので(あるいは猫なで声)、落合さんの語り方(そして宇野常寛さんの応じ方)のレベルが見たことないと感じられるだけで、実際には理系の研究者や院生は普段さらにわけのわからない話をしている。

たとえば量子統計の話だとか、超弦理論の話とかになれば、ほとんど意味不明の言葉が続くわけで、比較的わかりやすいと思われている脳科学や認知科学だって、専門家同士の会話は一般の方にはわからないだろう。

落合陽一さんが特別、というよりは、普段着でいるだけだと思う。
ただ、落合さんはちょっとばかり不親切すぎる(笑)というところがあるのだろうけど。

劇場効果(ここでは、動物行動学におけるeavesdroppingに近い意味で使います)
というのがあって、AとBが話していることを横から聞いて最初はわからなかったけれどだんだんわかってくるし、何よりもレベル設定がわかるということがある。

その意味で、Weekly Ochiaiは最高の劇場効果を持っているとは言えると思う。

逆に言えば、NHKを含めて日本のテレビを始めとするメディアのレベル設定は低すぎて(BBCのradio 4などでは、専門家どうしが普段どおりの対話をしている番組をよく流しているが、NHKではあれを1000倍くらいに薄めないとだめだろう)、きわめて残念な結果になっている。

日本のメディアは劇場効果がゼロなのだ。

むしろ、Weekly Ochiaiの劇場効果を地上波テレビなどにも広げていくフェーズに来ていると思う。

そうでないと、日本の科学技術リテラシーがいつまで経っても上がらないし、人々のレベル設定も低いままで終わってしまう。

ネット上では、オタク同士が一般関係なく自分たちの普段着のレベル設定で話し合っていることはよく見られることで、興味ある人は日本のメディアは捨てて、そちらの方に接して劇場効果を得るとよいと思う。


堀本見さんの面白い記事をきっかけに、日本のメディア状況の見直しが進めばいいな、と思います。

(クオリア時評)


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