連続ツイート2174回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は「小津安二郎はなぜ世界で愛されているのか」について。


小津安二郎の映画は、世界で愛されている。『東京物語』は、英国の映画関係者の投票で、史上ナンバーワン映画になったこともある。もっとも日本的で、派手なことが起こらない小津映画が、ここまで評価されるのはなぜか。


小津安二郎の描くのは、ごく当たり前の、家族の日常である。大きなドラマが起こるわけでもなく、普通の会話を淡々と描く。ところが、その日常が底光りしている。そこにこそ、人間のほんとうがあるということが見えてくる。

小津映画は、多くが、その日常が積み重ねられる家族の「崩壊」や「解体」を描く。結婚や死によって、いつまでも続くと思っていた家族のかたちが変わり、そのことで、かつて存在した日々が、この上なく大切なものだったということがわかるという構図になっているのである。


小津映画が、一見、あまりにも日本的な世界を描きながら、同時に普遍性を獲得しているのは、つまり、人間である以上地域や文化と関係なく成立しているほんとうのことに接触しているからだろう。日本的ということは表面の属性に過ぎない。その向こうに、人間としての本質がある。


小津安二郎の遺作である『秋刀魚の味』を、今まで数十回見ている人が少なくとも三人いる。作家の保坂和志さん、白洲信哉さんのいとこ(白洲次郎、白洲正子のお孫さん)、そして私である。信哉さんのいとこのところに飲みにいくと毎回『秋刀魚の味』を見せられると編集者の渡辺倫明さんが証言している。


以上、連続ツイート2174回、「小津安二郎はなぜ世界で愛されているのか」について、5つのツイートをお届けしました。



補足。イギリスに留学している時に、ロンドンで『東京物語』の上演があって、見に行ったらイギリス人でいっぱいで、見ているうちのぽろぽろ涙が出てきてしまった。今ほどインターネットが発達していなくて、隔絶されている感覚が強かった時代の話である。

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