連続ツイート2164回をお届けします。文章はその場で即興で書いています。本日は「芸術の秋に、ペンチメントについて考える」。


芸術の秋なので。「ペンチメント」とは、絵画における塗り直しのことで、いったんある絵を描いて、それでいいかなと思って、しかし、やっぱり変えようと思って、その上から、新たに絵を描いてしまうことを言う。ピカソもレンブラントもフェルメールもいろいろな人がやっている。


「ペンチメント」は、もともと「後悔」という意味で、つまり、一つの絵を描いてしまって、それじゃあダメだと後悔して、その上から新しい絵を描くのである。新しく描いた絵で、前の絵は隠れてしまうから、もう見えない。描いた本人以外には、下に別の絵が隠れているということはわからない。


ところが、月日が経つにつれて、上から描いた絵が経年変化して、変色したり、うすれたりすることによって、下の絵がぼんやりと見えてきてしまうことがある。そうなると、過去のその画家の「ペンチメント」が、歳月を超えて、復讐に戻ってくるような感じになるのだ。


現代の科学、X線などをつかって、ペンチメントが発見されてしまうことがある。有名な絵の下に、別の絵があることが、わかってしまうのだ。それは画家本人だったのか、あるいは別の人の絵だったのか、そのあたりは、研究者や鑑定家が推理することになる。


「ペンチメント」という概念を知ったとき、ああ、それは素敵だなあ、人生だな、と思って、そしたらそれをモティーフというかインスピレーションとして小説を書きたくなって、描いたのが『ペンチメント』で、今度講談社から出る。もし興味がある方は、読んでくださるとうれしいです。


以上、連続ツイート2164回をお届けします。「芸術の秋に、ペンチメントについて考える」をテーマに、5つのツイートをお届けしました。


補足。誰の人生にも、ペンチメントがあるように思う。自分の人生の塗り直し、ペンチメントについて考えるのも、芸術の秋、素敵なことだと思います。


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