654回



ひまわり花壇さん


茂木先生、こんにちは!いつも先生の投稿を楽しみにしています!

私は、先月まで、ある自動車部品工場の製造部門で派遣社員として働いていたのですが、そこで、はじめて"KYT"(危険予知トレーニング)というものを知りました。

具体的には、イラストを見て、それにどんな危険があるか、予測して箇条書きで書かせるというものです。

ある日、この"KYT"として、変な男の人が台車にダンボールを積んで運んでいるイラストが提示され、予想される危険を書きなさい、という指示の回覧が回ってきました。

この"KYT"の効果について、ずっと疑問に思っていた私は、我慢できなくなり、「あの、これ、やる意味があるのですか?これを書く事によって、どんな効果があるのですか?」と上司に聞きました。

そして、「このイラストの写真を撮らせて下さい!答えてくれるかどうか分からないですけど、脳科学の先生に送って、意味がある事なのか聞いてみます!」と言いました。

しかし、それは断られ、最終的に私は、さらに上の上司に呼び出されて、休憩室で『お座り』させられ、「これは、会社の方針で云々…」という話を長々聞かさせれました。

私は、"KYT"の効果がゼロだとは言い切りないという思いと、一刻も早くその場を、去りたい、という思いから、「ハイ…、ハイ…、ハイ…、ハイ…、分かりました。申し訳ございません…」というような応対をして、その場を、終わらせました。

そして、私は先月でその工場の仕事を辞め、今月、別の派遣会社でお世話になる事になったのですが、その新しい派遣会社でのオリエンテーションで"KYT"が出てきて驚きました。

"KYT"は以前働いていた会社独自のものだと思っていたのです。しかし、その派遣会社の担当者によると、これは労働基準局が指導しているもので、この"KYT"をやっているかどうかが、ちゃんとした会社?の基準の一つになっている、と言います。

もうこれを聞いて、やはり茂木先生に聞くしかない、と思いました。

私にとっては、ただ迷惑極まりないと感じていたこの"KYT"、自分の仕事とはほとんど関係のないイラストを見て危険を予測する事が安全面における効果的なトレーニングになるのでしょうか?



ご回答。


KYTというのが、「危険予知トレーニング」の頭文字である点からもわかるように、これは日本で独自に発展してきたメソッドでしょう。


https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%B1%E9%99%BA%E4%BA%88%E7%9F%A5%E8%A8%93%E7%B7%B4


脳科学を始めとする科学は、グローバルな文脈で発展してきているので、KYTのような国内文脈の方法論とは直接関係しません。


一方で、現場の経験則から導かれたトレーニングに、それなりの有効性が期待されることも事実でしょう。


このようなトレーニング法は、どんなにすぐれたものであっても、必ず、ひまわり花壇さんのようなコモンセンスのある方から見るとばからしい側面を含んでいるものです。英国のコメディの名作、The Officeにもそのような場面があります。


一方で、ばからしいように見えても、一定の効果が期待されるという経験則があるため、現場で使用され続けているのでしょう。


あまり過信せず、かといって全否定もせず、おつきあいされたらいかがでしょうか。

nounandemo
 
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