自分の乗る成田への飛行機が14時25分に搭乗開始で、国内線はもともとは余裕で着くはずだったのが、90分遅れる、とか言われたら、とりあえず「があん」となるヨネ。
だけど、係員の人は、どこかに電話して「余裕、よゆう!」とか言っている。
ワルシャワ空港に着いたら、すでに14時30分だった。
自分のゲートは13で、「LOT」と書かれたジャンボ機が、国内線のプロペラ機がとまったすぐそばに見える。
「あれ、あれに乗るんですけど!」
と思ったけど、ぼくが乗ったバスは、無情にも13番ゲートからどんどん離れていく。
結局、ターミナルの一番反対側まで行って、降ろされて、それから「Bダッシュ」した。
走りながら、ぼくの脳裏には、さっき国内線が着いたときに目に入った周囲のお客さんの様子がよみがえってきた。
話しぶりからイギリスから来たと思われるおばさまの手には、「搭乗開始13時50分」と書いてあった。
チケットを握りしめ、おばさまは呆然としていた。
間に合ったかな。
もう一人の、イタリア系と思われるおばさまの手には、「搭乗開始14時45分」と書かれたいた。
よかった。きっと、余裕だ。
不思議なことに、国内線が遅れたために、機内に「格差社会」が生まれていた。
一番余裕なのが、「搭乗開始14時45分」のイタリア系おばさま。
やばいのが、「搭乗開始14時25分」のぼく。
とってもやばくて涙がちょちょぎれそうなのが、「搭乗開始13時50分」のイギリス系おばさま。
ああ、さまざまな人間模様が交錯して、私たちは一瞬、エアポートな人になった。
その時、時刻はすでに14時30分を回っていたのである。
ぼくはターミナルをBダッシュしたおかげで、はあはあぜいぜい、なんとか13番ゲートに滑り込んで、搭乗している人たちの波にのみこまれた。
人の波に飲み込まれるのが、こんなに安心することだとは思わなかった。
ぼくたちは、運命共同体。
機内に入り、席に座って、静かに目を閉じ、しばらく眠って、それからおもむろに映画『ピーターラビット』を見た。
ピーターといっしょに、ぼくの心も揺れた。
よかったなあ、よかったなあ、と揺れた。