おじさま、見つけてごめんなさい。


 公園を走るとき、ぼくは「隅っこ」を行くのが好きで、大きな道ではなく、端の方の茂みの中の小径をいったりする。


 きのうも、新緑ってきれいだなあ、と公園の端っこをはしっていたら、なんだかギターの音が聞こえてきた。


 なんだろう、と思ったら、ツツジの茂みのかげにおじさまが一人、ギターを引いていた。


 公園の隅の方に向かって、みんなには背中を見せて、ギターを引いていた。


 あまり自信がなくて練習しているところなのだろうか、弾いて聞かせる、というよりは、「見つけないでくれ」「探さないでくれ」という雰囲気を醸し出していた。


 それで、ぼくがたまたま隅っこを走っていたので、おじさまを発見してしまったのだ。


 ぼくは、何となく悪いな、と思って、ルートを変更して、ぎゅっと曲がって公園の真ん中の方に走っていった。


 おじさま、見つけてごめんなさい。


 ギター、ゆっくり弾いてくださいね。


 今度から、公園の隅っこを走るときは、ギターを弾いているおじさまに気をつけよう。