中心を外さずに。第101回。


 ブロックチェーンは偉大なイノベーションだが、それを「通貨」を支えるために使う仮想通貨は、今のままでは持続不可能だと思う。

 

 まず第一に、ICOでコインを提供する人の「濡れ手に粟」感が、バランスを欠いている。

 イノベーションで新しい企業や産業を起こす人が、ある程度の資産を築くことは社会的に了解されることだと思うが、N番手の仮想通貨のICOには、そこまでのイノベーションがない。サトシ・ナカモトは偉かったし、そのあともEtheriumなどのイノベーションがあったが、パラメータや仕様をある程度変えたとしても、極端なことを言えばシステムの「コピペ」でも新たに仮想通貨を立ち上げることができてしまう。


 さらに致命的なことに、仮想通貨の種類の上限を決めるメカニズムがない。このため、誰でも新たに仮想通貨を発行し続けられるから、仮想通貨供給量に上限がなく、再現なく市場に投入されてしまうことになる。

 もちろん、市場メカニズムを通して人気のない仮想通貨は淘汰されるということも考えられるが、その場合でも、ロングテールが長すぎて、通貨としての安定性が担保されない。


 仮想通貨の価格の推移がチューリップ・バブルに似ているという指摘もある。

 

 ブロックチェーンは通貨以外の別の用途に使われるのが本来の姿で、それで通貨をつくり流通しようという目論見は、今のままでは一時の幻、バブルに終わるだろう。


 仮想通貨は、始まる前に終わってしまうのかもしれない。



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