中心を外さずに。 第48回

 今年の流行語が「忖度」であることについては、全く異議がない。

 「空気を読む」などの言葉に比べて、「忖度」は、上限関係や、組織の論理を前提にした非対称なものであることに特徴がある。そして、それが日本社会の一つの原理であることも、今回、私たちは改めて思うところとなった。

 無意識の中にあったものが、意識化されること自体は良いことだと思う。「忖度」が無意識のうちに人々を縛っている状態よりも、それが意識化され、言葉になり、意識の中で批判的検討を加えることができるものになったことで、私たちは自分たちのやり方を再認識する機会を持つことができるのではないか。

 「忖度」ばかりしていては、イノベーションや創造性、個性の発揮など、現代文明に不可欠な動きのさまざまが止まってしまう。

 流行語となったその次には、「忖度」が、ネガティヴな言葉、打破されるべき言葉になれば良い。


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