中心を外さずに。 第42回



昨日のJapan Timesの講演の時にもお話したのだが、日本のメディアにまともな映画評論がないことはほんとうに不幸なことだと思っている。

Japan Timesでは、Mark Schillingさんのreviewが載るが、これが容赦ない。的確に映画を評していて、ダメ出しも烈しい。しかし、そのような映画評論がないと、映画作品の質が育たない。

ロッテン・トマトのような容赦ない映画批評サイトは、賛否両論はあれど、やはり映画の質を育てる一つの装置になっていると思う。

日本映画でよくある、出演した俳優とかが(大手芸能事務所のタレントさんだったりして)地上波の番組をはしごして告知して、その映画が傑作である、という体で宣伝していく、あのぬるま湯的な雰囲気が、結局日本映画の質を低下させている。

その結果、みんなが不幸になる。

先日、桂文枝師匠の舞台に登場した加山雄三さんが、黒澤明監督の現場の厳しさを話されていた。
『椿三十郎』など、黒澤さんの撮影は厳しかったのだろうけれども、結果として歴史に残る名作となり、そしてみんなそれに関わったひとは誇りに思うことができる。
日本映画の批評的ぬるま湯は、結局、みんなを不幸にするだけだと思う。


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